システムが複雑でデジタル化できない企業にHANAを SAP・ロイケCTO:SAPPHIRE NOW Orlando 2014 Report
2日目を迎えたSAPの年次カンファレンスでは、新任CTOのバーンド・ロイケ氏が講演。HANAソリューションのロードマップを語った。
独SAPがフロリダ州オーランドで開催中の年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW Orlando 2014」は、6月4日(現地時間)に2日目を迎えた。
午前中のキーノートでは、先月に退社したビシャル・シッカ氏の後任としてCTO(最高技術責任者)を務めるバーンド・ロイケ氏が登壇し、インメモリコンピューティング「SAP HANA」のアップデートやサービスロードマップなどを語った。
あらゆる業界の課題をシンプル化
昨年来、IT業界の旬なテーマとなっている「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」や「M2M(Machine to Machine)」。これはインターネットを介した従来までの人と人、人とモノとの通信にとどまらず、さまざまなデバイスや機器がインターネットと連携するような状態を表すものだ。
現在、70億個のデバイスがインターネットに接続されており、2015年末には140億個、2020年には500億個のデバイスがつながるとされている。ロイケ氏は「IoTの登場などによってあらゆるもののデジタル化が進むことで、多くの企業もまたデジタル化に向けた変革を迫られている」と話す。
しかしながら、一筋縄ではいかないのだという。なぜか。今の企業システムの多くは複雑なインスタンスが存在し、アプリケーションやデータが散乱するほか、レガシー技術で作られているため、精度や柔軟性に欠けているからだとする。「現在のシステムのランドスケープは複雑性を極める」とロイケ氏は指摘する。
このような企業システムの諸問題を解決するSAPのアプローチが、今回のSAPPHIREで繰り返し強調されている「シンプル化」である。具体的には、単一のプラットフォームとしてHANAベースのクラウド基盤(SAP HANA Enterprise Cloud)を用意し、その上にアプリケーションや業界ごとのテンプレートなどを搭載して提供することで、顧客の企業システムをシンプルにする。SAPPHIRE開催に先立ち、金融や小売、ヘルスケアなど25業界に特化したクラウドソリューションを顧客やパートナーなどとともに再構築することを発表している。
加えて、本キーノートの中で、HANAの最新版となる「HANA SP8」をアナウンス。これにより、顧客はLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」や米Intelのサーバ用CPU「Xeon E7v2」ベースのシステム、複数のサードパーティによる高可用性および災害復旧ソリューション、さらに認定された20のパートナーネットワークなど、幅広いエコシステムを利用できるようになるほか、ビジネスインテリジェンス(BI)およびデータ可視化ソフトウェア「SAP Lumira」をHANAプラットフォームに展開してリアルタイム分析機能を提供する。
「HANA SP8をリリースするに当たり、多くの顧客からのフィードバックを反映している。企業の複雑なプロセスをシンプル化し、ダウンタイムを限りなくゼロに近づけるものを提供する。HANAこそが次世代のITプラットフォームだ」(ロイケ氏)
HANAに関して、実績ベースでは、全世界で3376社に導入されている。中でも1年前にリリースしたばかりのERPソリューション「SAP Business Suite powered by SAP HANA」の採用が1000社を超えたことに、ロイケ氏は力を込めた。
Simple Suiteを順次提供
キーノートでは、昨日紹介された財務ソリューション「SAP Simple Finance」についても触れられた。SAPは今年4月27日から同ソリューションの適用を開始、既存システムからの移行は2カ月で完了したという。このシステム刷新によって4半期の決算を5日間縮められるようになった。
SAPでは、このソリューション群を「Simple Suite」として提供する。今後、「Inventory mgmt」(在庫管理)、「Sales and ATP」(セールス&納期回答)「Manufacturing」(製造)「Purchasing」(購買)と、年内で順次リリースする予定だ。
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