資生堂が1万人超の“美容部員”にiPadを配った理由(3/3 ページ)
資生堂は昨年、1934年から活躍している“美容部員”こと「ビューティーコンサルタント」約1万人にiPadを一斉導入した。その背景と狙いとは――。
このように順調のように見える資生堂のiPad活用だが、導入当初はトラブルもあったようだ。
「導入時の混乱を防ぐべく、当初はヘルプデスク体制を強化していたが、実際には初日だけで旧システム使用時の月間総件数に近い問い合わせがきてしまい、ほとんど対応しきれなかった」と毛戸さん。問い合わせの多くは「ログインパスワード忘れ」によるもので、安定して運用できるよう現在も対応を進めているという。
このほか、iOSならではのトラブルもあったという。「アプリケーションの互換性を考慮し、社内ルールでOSバージョンアップを禁止していたが、iOSのバージョンアップ通知は管理者側で制御できないため、実際には1%ほどのユーザーがバージョンアップを行ってしまった。その都度に端末の回収・交換を行う手間がかかった」
現在ではこれらの問題に対処し、ほとんどのビューティーコンサルタントがiPadを使いこなせるようになったという。「当初から思い描いていた効果が実現できたので、率直に“導入してよかった”と思う。ただ、iPadの法人向けサポートはもっと拡充してほしいですけどね」と毛戸さんは笑う。
“現場の声”が成功のカギに
資生堂では今後、これまでに得た導入成果やトラブル対応のノウハウをもとに、さらなるiPad活用を進めていく考えだ。
例えば「iPadによる顧客応対サービスを一層充実させていきたい」と毛戸さんは話す。また、アプリケーション自体の使い勝手も向上させていきたいという。
「導入前には、現場から『本当にiPadを導入すべきなのか』といった不安の声もあった」と毛戸さんは振り返る。「現場は最初“疑心暗鬼”だったが、われわれ自身が何度も事業所に足を運んでニーズをくみ取ったことで、現場スタッフにも満足してもらえるシステムになったと思う」(三浦さん)。
「今回のような大規模なシステム導入は、本社主導による一方的なものでは決してうまくいかなかっただろう」と毛戸さん。資生堂は今後も“現場の声”を取り入れながら、顧客とスタッフの両者に価値あるiPad活用を目指していく。
関連記事
- JR東日本が「iPad mini」を全面導入した理由
全乗務員(運転士・車掌)にiPad miniを携行させると発表したJR東日本。大規模導入の背景や、これまでに見えてきた成果とは。同社の担当者に聞く。 - 「一斉配布しなかったからうまくいった」 iPadを武器にしたアサヒビール
営業担当者の生産性向上を図るべく、アサヒビールが選んだツールがiPadだった。単に社員に配布するだけで終わってしまう企業が少なくない中、アサヒビールでは現場での活用をいかに進めていったのか。 - 創業210年のミツカングループがiPadを本格導入した理由
「味ぽん」などで知られる食品大手のミツカングループは、早期からモバイル端末の業務活用に取り組んできた先進企業でもある。そんな同社が進めているタブレット活用プロジェクトの全貌とは――。 - 成田空港の旅客サービスを変えたiPad導入の舞台裏
成田空港はターミナル内のスタッフにiPadを携行させ、旅客向けの各種案内サービスを強化したという。その取り組みの全貌に迫る。 - 学生1万9000人が使う“PCルーム”を全廃する九州大 その狙いとは?
九州大学は2017年度までに全学生に個人所有PCの持ち込みを義務付け、学内のPCルームを全廃する計画だ。その背景と狙いを聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.