新興ベンダーを軽視する日本企業は時代に取り残される:岡目IT八目
大手ITベンダーに頼り切っている日本企業は多い。しかし、この先いつまでそんな関係を続けていられるのだろうか?
長年はびこる大手ベンダー依存
基幹系システムの構築から運用までを国内外の大手ITベンダーに頼り切っている日本企業は少なくない。恐らく理由としては、「彼らに頼んでおけば、それなりのものを作ってくる」という安心感があるからだ。「約束通りの期日に納品してくる」といった信頼感もあるだろう。
しかし、ITが目まぐるしく進歩する中で、そんな大手ITベンダーとの関係をいつまで続けられるのだろうか。10年前、20年前、伝統的な大手ITベンダーは革新的なテクノロジーを生み出し、市場の成長をけん引した。だが、企業におけるIT活用の目的が合理化、効率化から業績への貢献と変化し、IT投資の重点は古典的な基幹系システムからインターネットを駆使した新たな基幹系システムや情報系システムへと移っている。求める要件も品質や信頼性から、スピード、投資効果へと変わりつつある。業績を左右するシステムに使う製品やサービス、開発手法などの選択規準も異なる。
興味深い調査結果がある。IT調査会社の米Gartnerが2013年10月に発表した、世界のCIO(最高情報責任者)に聞いた「過去10年と今後10年で影響力のあるITベンダー」だ。今後10年で最も影響力のあるのは「まだ見ぬ新興ベンダー」と多くのCIOが回答したこと。IBMやOracleなど伝統的な大手ITベンダーではなく、革新的な製品やサービスを創り出す新興企業の登場を待ち望んでいるように思える。
調査結果をもう少し見てみよう。「過去10年で影響力のあったITベンダー」は、Apple(37%)、Microsoft(23%)、Google(15%)の順である。IBMやCisco Systems、SAP、Oracleの大手ITベンダーは軒並み5%と、影響力の低さを感じてしまう。一方、「今後10年間」ということになると、Google(28%)、Apple(20%)、Microsoft(15%)の影響力は顕在のようだが、IBMなど伝統的なITベンダーの影響力は4%以下とさらに下がる。代わりに期待値を一気に上げたのが「まだ見ぬ新興ベンダー」(32%)というわけだ。
この調査結果から、世界のCIOがいかにITベンダーの動向をウォッチし、業績拡大や新市場創出にどんなテクノロジーや製品を適用していこうかを考えていることが分かる。テクノロジーのロードマップを描けないITベンダーや、効果的なIT活用を提案できないようなITベンダーは、付き合うパートナーから外す。
新しいテクノロジーを評価できないIT部門
一方、ガートナージャパンの亦賀忠明最上級アナリストが以前から「偽物のクラウドがある」と指摘するのは、ユーザー企業のIT部門にITベンダーの取り組みを評価する力を持てと説いているようにもみえる。背景には、日本企業のIT部門が伝統的な大手ITベンダーに依存し過ぎることがある。新興ベンダーが画期的な製品を開発しても、「影響力はない」と軽んじ、導入の検討すらしない。
受け身のIT部門は、「問題を起こしたら大変なことになる」と失敗を恐れる。投資効果を二の次にし、経営者や利用部門からの批判を心配するのは、成功しても感謝されないことにも起因するのだろう。しかし本当は、新しいテクノロジーや提案を評価する能力がないからかもしれない。
そんなIT部門に限って、採用する気もないのに「この機能がない」「こんなサポートがない」などと、新興ベンダーの製品やサポート体制に難癖をつける。ITをどう活用すれば業績アップにつながるかを考えようともしない日本企業に対し、「当社の製品はもう売らない」と拒絶反応を示す新興ベンダーも出ているという。
ITベンダーの動向を分析し、次世代のテクノロジーの発展性を読む力のないIT部門に頼ったシステム作りは、時代遅れになり、企業競争力を失いかねない。こうした事態を打開するには、まずは内製化から始めて、IT部門が主導的に企業のIT化を推進する体制を築いていく。そして、新興ベンダーを含めた世の中にある素晴しいテクノロジー、製品、サービスを見つけ出し、いち早く適用する。そんな力が求められているはずだ。
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