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研究開発を牽引するクラウドとビッグデータ、リスク管理をどうするかビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/3 ページ)

健康医療分野の研究開発ではクラウドやビッグデータの活用が進んでいる。だが、ステークスホルダーや活用されるデータの広がりとともに、様々な情報セキュリティやリスクの問題も浮上する。先行する米国での事情はどのようになっているだろうか。

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医薬品産業固有のリスク

 伝統的に医薬品産業は、特許権に基づくビジネスモデル上に成り立っており、基礎研究から上市に至るまでの創薬バリューチェーンの期間を短縮することが最優先課題となっている。とはいえ、1社単独で新薬を世に送り出すことは年々困難になっている。基礎研究、臨床開発など、個々のプロセスで戦略的アライアンスを締結したり、アウトソーシングサービスプロバイダーを利用したりしている。

 図1は、創薬バリューチェーンとアウトソーシングサービスのエコシステムを例示したものである。上流の基礎研究から下流の臨床開発、生産・物流、販売・マーケティング、市販後対策へと進むに従って、製品事業化のリスクは下がっていく反面、下流に進めば進むほど、プライバシー/個人情報に係るデータが増え、情報セキュリティ管理のリスクは相対的に上がる。R&Dの進ちょく状況は個々の製品によって異なるため、ポートフォリオ的な視点から情報セキュリティ/リスク管理を行う必要がある。

図1
図1・創薬バリューチェーンとアウトソーシングサービスのエコシステムの例(出典:NPOヘルスケアクラウド研究会、2014年9月)

 加えて、創薬バリューチェーンにおけるコラボレーションやアウトソーシングサービスの形態も、時系列で変化する。図2は、創薬バリューチェーンにおけるコラボレーションとアウトソーシングサービスの進化を例示したものである。

 例えば、コラボレーション形態はプライベートクラウドをベースとする単一組織から、パブリッククラウドをベースとする民民/産学連携、コミュニティクラウドをベースとする公民連携(PPP:Public-Private Partnership)、さらには国境を超えたグローバル連携へと進化する。

 また、アウトソーシングサービスの形態も、共通基盤を対象としたインフラストラクチャアウトソーシング(ITO)から、ノンコア業務を対象としたビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)、コア業務を対象としたナレッジプロセスアウトソーシング(KPO)、さらにはプロフェッショナル業務を対象としたエンタープライズクラウドソーシング(例:オープンイノベーション、クラウドストーミングなど)へと進化する。

 ただし、コラボレーションやアウトソーシングサービスの形態が進化すると、情報セキュリティに不可欠なID/アクセス権限の変更管理など運用負荷も大きくなり、複雑化の一途をたどる可能性がある。加えて、直接コントロールできないクラウドサービスを組み合わせて利用する場合、プロジェクト当初の段階で責任分担を明確化し、事前にリスク評価することが必須である。

図2
図2・創薬バリューチェーンにおけるコラボレーションとアウトソーシングサービスの進化(出典:NPOヘルスケアクラウド研究会、2014年9月)

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