研究開発を牽引するクラウドとビッグデータ、リスク管理をどうするか:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(3/3 ページ)
健康医療分野の研究開発ではクラウドやビッグデータの活用が進んでいる。だが、ステークスホルダーや活用されるデータの広がりとともに、様々な情報セキュリティやリスクの問題も浮上する。先行する米国での事情はどのようになっているだろうか。
ビッグデータとオープンデータの連携で求められるセキュリティ管理の透明性
2014年5月に米国政府が発表した「BIG DATA: SEIZING OPPORTUNITIES, PRESERVING VALUES」(関連PDF)を見ると、公共部門におけるデータ管理の章で、健康医療分野が取り上げられている。そこでは、前回取り上げたビッグデータ分析技術による保険医療支出の適正化と並んで、個々の病気の分子的特性に基づいて治療効果を事前に予測する「予測医療」(Preventive Medicine)が紹介されている。
予測医療では遺伝子データ、臨床データ、財務会計データ、ライフスタイルデータなど、様々なデータソースを収集・連携させながら、患者中心の視点に立って先進的な分析モデルを構築することが求められる。だが、データの保存方法や保存期間、プライバシー/個人情報保護対策など、ビッグデータの運用管理に係るルールは、データソースによってまちまちであり、場合によっては、ルール間に矛盾が生じる可能性がある。米国政府の報告書では、様々な組織や専門家が関わる予測医療について、研究開発バリューチェーン全体の視点に立ったデータ保護規制の整備を課題として挙げている。これは、創薬バリューチェーンを牽引するコラボレーションやアウトソーシングサービスの進化にも関わる重要課題であり、今後の動向が注目される。
ビッグデータ推進策に重なり合ってくるのが、同月に公表された「米国オープンデータ行動計画」(関連PDF)である。健康医療分野では、退役軍人が電子医療情報にアクセスできるようにする「Blue Button」、医薬品・医療機器の表示、副作用情報、リコール情報などを公開する「OpenFDA」などが示されている。
ただし、健康医療R&Dのビッグデータのソースとして公的なオープンデータが組み込まれると、政府機関のステークホルダーである国民、地域住民の影響力も大きくなる。情報セキュリティ/リスク管理についても、一般市民を念頭に置いた透明性の確保、適正な情報開示が要求されることになる。その影響は創薬バリューチェーンに関わるベンチャー企業やアウトソーシングサービスプロバイダーにも及ぶ。情報漏えい対策などは要注意だ。
次回は、公民連携の視点から一般市民が参加する「シビックテック」(Civic Tech)の情報セキュリティ/リスク管理について取り上げる。
著者者紹介:笹原英司(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所などでビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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日本クラウドセキュリティアライアンス ビッグデータユーザーワーキンググループ:
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