IBMのスパコン「Watson」、料理人になる:尻敷かれのあなたも助かる?(2/2 ページ)
人間の話し言葉を理解し、データを蓄積することで自ら“学習”するIBMのスーパーコンピューターシステム「Watson」。すでに医療、金融、料理という3つの分野では、Watsonの英知を利用したアプリケーションが登場しており、今後アプリの数は増えていくという。
Watson、料理人になる
料理の世界にも「Watson」は大きな影響を与えるかもしれない。3つ目は料理のサポートをするシステム「Chef Watson」である。料理は栄養を摂取するために日々の欠かせない作業であると同時に文化でもある。とはいえ、日々クリエイティブな新しい料理を考えるのは非常に困難だ。
Chef Watsonは膨大な料理のレシピデータを基に、ユーザーが提示する材料やイベント(ランチ、ディナーなど)といった条件に合ったレシピを提示するだけでなく、どんな材料の組み合わせが良いかを分析する。この組み合わせの根拠は栄養価や化学組成といった食材の科学的な側面や、人間の味覚を分析した結果も加味されるそうだ。
すでに調理学校で学ぶ生徒の教育現場で利用が始まっており、申し込めばβ版のサービスを利用可能だ。また、近いうちにWatsonの分析結果を反映した新たなレシピ本「Cognitive Cooking」が発売するという。これにはローディン氏も「まさかIBMから料理のレシピ本が出るなんて思ってもなかったよ」と驚いていた。
APIも公開、今後もさまざまなアプリが登場予定
今回紹介した「Watson Application」は3つだが、現在500以上のアプリケーションの開発が進んでいるとしており、今後ラインアップは増えていくと思われる。開発者向けにAPIもBluemix上で公開しており、1500人の開発者が2000以上のアプリ開発を進めているそうだ。
また、大学でWatson Applicationの開発を教える授業も展開しているという。現在はカーネギー、オハイオといった有名な州立大学が中心だが、2015年内には世界で100の大学で同様の授業が開講されるという。
こうしたアプリの開発が進めば、誰もがWatsonの力を使った判断ができるようになる。一握りの専門家しか持ち得なかった高度な専門知識も、分析結果という形で多くの人に利益をもたらすようになるだろう。これをローディン氏は“知識の民主化”という言葉で表現した。
「Watsonを使えば、一人ひとりの市民が科学者やイノベーターになれる。これは『知識の民主化』とも言えます。すべてのコミュニケーションが“学習”になり、すべての行動がデータに基づいたものになるでしょう。人間の決断を加速化させるのです」
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