オラクルの「エンジニアドシステム」が目指すコンピューティング:Weekly Memo(2/2 ページ)
オラクルが高速データベースマシンの新製品発表を機に、「エンジニアドシステム」が目指すコンピューティングについて明らかにした。キーワードは仏教用語の“無分別智”だ。
「無分別智」からユーティリティコンピューティングへ
杉原氏はさらに、スーパークラウドシステムズと位置付けたエンジニアドシステムが目指すコンピューティングのありようについて次のように語った。
「もともとソフトウェアメーカーのオラクルがハードウェアを手掛けるようになったのは、自分たちが開発したソフトウェアのパフォーマンスを最も発揮させるために、ハードウェアと融合させる必要があると考えたからだ。ただ、そうしたやり方を単なるハードとソフトの抱き合わせ販売だと見る向きもあるが、まったく次元が違う。その核心は、ハードとソフトの融合とはどういうことかにある」
「オラクルが考えるハードとソフトを融合させた究極的なありようは、仏教で言うところの“無分別智(むふんべつち)”にある。無分別智とは、相対的な主観と客観の分別を離れた真実の智恵のことを示す。つまり、ハードやソフトといった区切りを取り払い、それを意識することなくユーザーが使える環境を提供したいというのが、エンジニアドシステムに込めたオラクルの思いだ。無分別智のように完璧な融合を図ったエンジニアドシステムによって、オラクルが目指したいのは、誰もがICTを電気やガス、水道と同様に使えるようにする“ユーティリティコンピューティング”である」
杉原氏は「記者の皆さんは早く新製品の内容を聞きたいでしょうけど、なぜ、エンジニアドシステムなのか、スーパークラウドシステムズなのかを、しっかりとお伝えしておきたいので……」と言いながら、上記のように説明した。「無分別智」や「ユーティリティコンピューティング」についての話は、米Oracleの創業者で2015年現在はCTO(最高技術責任者)を務めるラリー・エリソン氏と幾度も論議し、エリソン氏が以前から考えてきたことをもっとアピールしていこうということにしたそうだ。
難しい概念や技術の話を他の身近なものに例えて少しでも分かりやすく伝えるのは、特にICT分野では非常に大事なことだ。今回の杉原氏の話は、その意味で大いによかったのではないかと思う。
ただ、来たるべきデジタル社会におけるユーティリティコンピューティングのありようとして、エンジニアドシステムのような形態がクラウドのシステム基盤として本当に理想的な姿なのか。これは、ICT業界としてさらに論議を重ねながら、よく考えてみる必要がある。この話はこれまでのICTシステムにおける「集中」と「分散」の歴史の変遷に基づく検証から、今後の課題などを見出すことも大事なような気がする。杉原氏の話は、そんな根本的なことを考えさせてくれる機会になった。
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