システム改修もTwitterの運用もやります――東急ハンズを変える“攻めの情シス”たち(1/3 ページ)
頓挫していたシステム改修を成功させ、誰よりも現場のことを知っている“販売員”を情シスに育て、Twitterの運用をも手がける――。東急ハンズのIT活用に“現場視点”の変革をもたらした立役者に、その心意気を聞いた。
日本でTwitterがブームの兆しを見せた2010年頃、多くの企業が公式Twitterアカウントを開設した。その中でもいくつかの企業は、公式アカウントらしからぬ“ゆるい投稿”や一般の人との気さくなやり取りが親しみを呼び、「軟式企業」などと呼ばれて人気を得た。
東急ハンズのTwitterアカウントもその1つで、お店の商品や自社のロゴをネタにしたボケやツッコミ、他の企業アカウントとのからみ合いなど、私達を楽しませてくれるつぶやきをたくさん繰り出している。
当時、東急ハンズでは、その公式アカウントの運用を情報システム部門が行っていたと聞いて驚いた。一般的には、Twitterは消費者とのコミュニケーションを担うものということで、マーケティングや広報の部門で担当することが多く、縁の下の力持ち的な情報システム部門が運用しているという例は珍しいからだ。
そのTwitterの仕掛け人でもあるのが、東急ハンズのIT部門を率いる長谷川秀樹さん。外部から招かれてIT部門のトップに就任した同氏が、ゆきづまっていたシステム改修を成功させ、情シス部門に“現場視点”をもたらす改革を行うまでの過程を追った。
状況を見極め、もつれを解きほぐす
長谷川さんが東急ハンズに入社したのは2008年。その当時、会社は経営改革のただ中にあり、その一環として進められていたのが商品の仕入れ方法の変更だった。
以前の東急ハンズは、仕入れる商品を店舗ごとに売り場スタッフが決めていた。それにより各店舗の独自色が打ち出され、店舗間の競争が促されるという利点があったが、時代の流れの中で非効率な面が目立つようになり、本部で一括して仕入れを行うことになったのだ。この大きな業務プロセスの変更のために情報システムも刷新する必要があったが、そのプロジェクトがうまくいかずストップしていた。
長谷川さんは、この状況を打開し、新システムの導入を成功させるための“システムのプロ”として、外部から呼ばれたのだ。
止まっていたシステム開発を再開させ、導入を成功させるためには、大きな2つのポイントがあった。1つは、冷静に状況を見極め、それを関係者にも分かりやすく伝えること。もう1つは、社内の人間関係づくりだ。
長谷川さんの入社当時、「プロジェクトがうまくいかないのはシステムの機能が悪いせいだ」と考えられていた。でも、長谷川さんはそれを鵜呑みにするのではなく、自分の目で確かめた。すると、必ずしも機能が悪いわけではなく、それをそのまま展開したほうがうまくいくと感じたという。
ではなぜ上手く行かないのか。それは仕入れを本部に統合するという変更にあたって、本部と各店舗の役割分担が明確になっていない部分があることが理由だった。「システムが悪い」というのは、その状況を曖昧にした状態での言い訳になってしまっていたのだ。
そこで長谷川さんがとった対策は、関係者が状況を理解し、お互いの目線を揃えるための場を用意することだった。
「機能は悪くないと言っても、みんな何か不満を持っているから上手くいっていなかったわけで、その不満を解消する必要があったのです。そこで、毎週定期的に営業系の部長を集め、業務改善打ち合わせをやりました。
例えば商品の改廃とか、発注方法とか、売上管理とか、いろいろテーマがあるんですけども、テーマ別に業務フローを描いて、本社と店舗の役割を整理しました。
それ以前は、本部で一括してやると言いながらも、まだ右往左往していて、それぞれの部門の思いが揃っていない状態で、システムが対応している、していないという話になってしまっていたんですね。会議では『これが我々が考える新しい業務の形で、システムはそれに沿った形で作るんだから問題ないよね』ということを確認していったんです」
そうやってもつれた状態を解きほぐし、みんなが納得しやすいプロセスを経ることで、プロジェクトを進めやすい状況を作ったのだ。
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