システム改修もTwitterの運用もやります――東急ハンズを変える“攻めの情シス”たち(2/3 ページ)
頓挫していたシステム改修を成功させ、誰よりも現場のことを知っている“販売員”を情シスに育て、Twitterの運用をも手がける――。東急ハンズのIT活用に“現場視点”の変革をもたらした立役者に、その心意気を聞いた。
地道なコミュニケーションが仕事を助ける
また、長谷川さんは社内の関係者との関係づくりに、非常に力を入れた。
長谷川さんが入社した当時、情報システム部門には長谷川さんより年下の部下は1人しかおらず、みんな40歳以上のベテランだった。急にやってきた年下の部下に対して、メンバーの態度はさまざまだったという。
「システムの導入が一時凍結になってみんな困っていたので、わらにもすがるような思いで、よそから誰か来てうまく行くんだったらそれでいい、という人がほとんどだったと思います。でも、中には『自分より若いやつが外から急にやってきて部長だなんて、とんでもない』と反発してくる人もいましたよ」
反発する人は、話しかけても目も合わさないという状況だったそうだが、そんな人も含めて、長谷川さんは毎日必ず全員と言葉を交わすことを日課にしていた。
また、入社して2年間は他部門の人も含め、仕事で関係しそうな人と毎日飲みに行ったのだという。
「超日本人的なやり方ですね。僕は外資系の会社にいたのでそんなノリはなかったんですけども、冗談抜きで毎日、相手を変えて飲みに行きました」
システムや業務の改善のために「こういう風に変えていきましょう」と言っても、長谷川さんに抵抗する人は、できない理由を並べて動いてくれなかった。それでも長谷川さんは、会議や飲み会の場で何度も繰り返して伝えることを止めなかった。そして5回から10回繰り返してようやく、「そんなに言うなら……」と、しぶしぶながらも動いてくれるようになったのだそうだ。
「うれしかったのは、入社して3カ月から半年くらいの時、飲み会の席で、『そういえば専務が、情シスがちょっと明るくなったねって言ってたよ』と言ったら、いつも反発してた人が『それは長谷川さんが来てくれたからですよ』って、そっぽ向きながらも言ってくれて……。雪解けの瞬間ですよね。もう、どわーっと涙が出ましたね(笑)」
長谷川さんは、仕事で関わりのある他部署の部長のところへも、毎日顔を出すようにしていたという。
「企業がV字回復するときのポイントは、日産がやったような『クロスファンクショナルチーム(部門横断チーム)』、あれに尽きるんですよ。うまくいかないのはたいてい、部署最適になっていて会社全体として歯車が合っていないからなんですね。
だから歯車が合うように他の部署にいろいろ頼みに行かなければいけないんだけど、基本的にみんな、背負いたくないし変えたくないんです。そんな中、動いてくれるかどうか、企画の良し悪しで判断されるのは多分30%くらいで、70%くらいは頼んできた奴のことが好きかどうかで決まるんですよ。
何かをお願いしに行った時に『長谷川ちゃん、どうしたの? どれどれ?』と聞いてくれるか、一応顔と名前は知ってるけど『長谷川さん、どうしたんですか?』という雰囲気の場合とでは、無理してでもやろうとしてくれるかどうかが違うんですよね。やっぱり、頼んできた人のために一肌脱いでやろうと思うかどうかで……。
だから、関連する部長のところには毎日行って、『最近どうですか』みたいなことをしゃべったりしてましたね」
冒頭に挙げたTwitterに関しても、会社によってはマーケティングや広報の領域を侵害した、と他部署からのクレームを引き起こす可能性もある。だが東急ハンズの場合は、長谷川さんが「面白そうだから」と情報システム部門で始めた方のアカウントについて、実は別の公式アカウントを運用していた広報部門も「盛り上がってるし、いいか」と認めていたそうだ。
外から来た人間が力を発揮するためには、本人と受け入れる組織と、それぞれの姿勢がうまく噛み合う必要があるのだということを感じさせられる話だった。
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