システム改修もTwitterの運用もやります――東急ハンズを変える“攻めの情シス”たち(3/3 ページ)
頓挫していたシステム改修を成功させ、誰よりも現場のことを知っている“販売員”を情シスに育て、Twitterの運用をも手がける――。東急ハンズのIT活用に“現場視点”の変革をもたらした立役者に、その心意気を聞いた。
現場を知る“販売員”を情シスに育てる
もう1つ、長谷川さんが良いチームワークを築くために大事にしたこととして、自部門に社外から人を入れることをしない、ということがあった。
管理職レベルの人が中途入社する場合、前の会社で一緒に働いていた部下を連れて来るなど、社外から人員を補強することがよくある。長谷川さんも、入社時に会社側から「必要な人員を採用するからリクエストを出してくれ」と言われていたが、そうしなかった。
「僕は、外から人を採用するのは絶対しないと決めていました。
以前にコンサルをやっていた時、上手く行っていない組織に入っていって、そこの社長に『どうだね?』と聞かれて、『めちゃくちゃですね』なんて答えて、それを改善するために外から人を入れるんだけどうまくいかない、というのを見てきましたから。
僕は、東急ハンズに入った時、情シス部門について『どうだ』と聞かれても『ダメだ』とは言いませんでした。部署間の歯車がうまくいっていなかっただけで、情シスが悪いわけではなかったんですよ。だから『普通だと思います。歯車が合っていないと思うので、そこを調整します』と言ったんです。
会社組織というのは、中にいる人間がみんなで同じ方向を向いている時にうまくいくんです。今の組織がダメだからと中途採用をすると、元いた人たちと新しく来た人たちとで組織が分断されてしまう。そうなったら最後です。だから今いるメンバーでやろうと決めていました」
しかし、長谷川さんが入社した当時と今とでは、情報システム担当のメンバーは倍以上に増えている。どうやって人員を確保してきたのかというと、店舗で働いていた社員を異動させたのだという。しかも、情報システムに関しては全くの素人であった元店舗スタッフの社員たちにプログラミングを学ばせ、以前は外注していたシステム開発を社内の人員で賄う「内製化」を押し進めた。
突拍子もない話に聞こえるが、それによって外注をやめてコストの削減ができた上、“元販売員”という、誰よりも現場の業務を理解しているメンバーがシステムを開発することによる効率アップなど、明確な成果につながったそうだ。
一般的には、情報システム部門というのは裏方仕事で、それほど挑戦のチャンスがあるようには感じられない。しかし長谷川さんからすれば、現場の近くにいればシステムに対するニーズは次々とあふれるほど出てくるので、それに応えていくだけでもフル回転状態になるはずだという。
単に言われた通りにシステムを開発するのではなく、業務の改革にまで踏み込んで提案してみる――そんな働き方ができれば、情シスだってかなり手応えを感じられ、ビジネスマンとしての成長にもつながるだろう。その積み重ねと、役割意識にとらわれず「面白そう」と感じることに果敢にチャレンジする姿勢こそが、“攻めの情シス”を生み出す原動力になるといえるだろう。
やつづか えり
1999年一橋大学卒。2009年デジタルハリウッド大学院修了。コクヨおよびベネッセコーポレーションで11年間勤務の後、フリーランスに。企業に対する教育系Webサービスやアプリの企画・開発支援を行うと同時に、組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』を運営中。さまざまな組織人にインタビューをし、多様な働き方、暮らし方と、それを実現するためのノウハウを紹介している。
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