在宅ワーカーたちのつながり、線から面へ YPPの連帯感を強めたチャットツールの力(1/2 ページ)
人手不足でテレワークやワークシェアリングが注目を集める中、“離れた場所にいるワーカー同士のコミュニケーション”という課題が浮上している。10年前からこの問題に取り組んできたYPPの解決法は。
安倍内閣が打ち出した「2020年までに日本を世界最高水準のIT活用の国にしよう」という取り組みが契機となり、女性が子育て中でも働き続けるための施策が注目を集めている。助成金などの支援もあり、テレワークやワークシェアリングに関心を持つ企業も増えてきた。
そのさきがけともいえるのがYPPのワークスタイルだ。10年前に、「働きたいけれど、フルタイムの仕事はできない」という人たちを集め、中小企業の事務代行サービスを開始。顧客企業を訪問して作業を代行するスタイルからスタートし、現在では在宅でのデータ入力や、各メンバーの近隣店舗の巡回など、さまざまな業務を請け負う。登録メンバーは、全国各地、そして海外にも広がっているという。
しかし、メンバーが増え、離れた場所に住む人同士が一緒に仕事をするようになると、ひとつの課題が持ち上がった。メンバー同士のコミュニケーションがスムーズにいかなくなったのだ。そして、この問題を解決したのがグループチャットツールだった。
YPPはどんな視点でツールを選び、どんな工夫でコミュニケーションの課題を解決したのか。五味渕のり子社長に導入の背景や活用術を聞いた。
メンバー同士で問題解決できる環境構築が急務に
YPPが社内SNS「CHITCHAT!」を導入したのは2013年。きっかけは、365日、毎日納品がある大きな仕事を請け負ったことだ。
この案件を担当することになったメンバーは20人ほど。YPPでは1つの仕事に複数のメンバーを割り当て、子供の病気などで急に都合が悪くなる人がいても互いにバックアップできる体制をつくっている。だが、20人ものメンバーが一気にアサインされるのは初めてのことだった。
メンバーが仕事をする時間帯は、各々の生活の都合に合わせて昼間であったり深夜や早朝であったり、まちまちである。そして、それぞれの業務中に分からないことがあると、各自が本部に問い合わせをすることになっていた。
「みんな子育てや家事があってPCに向かえる時間は限られているので、問い合わせたらすぐに回答が欲しいんです。それで、本部は24時間コールセンターのような状態になってしまい、このままでは本部が疲弊してしまう、何とかしなければ、と考えました」
当時は質問とその回答を他のメンバーに共有していなかったため、同じような質問を何度も受けることがあったという。それが“二度手間”“三度手間”につながり、本部の負担増につながっていた。
「メンバー同士が交流できる場を作れば、本部が介在しなくても、互いに教え合って問題解決できるはず」――そう考えていた時、たまたまCHITCHAT!の広告を見かけた五味渕さんは、すぐに導入を決めた。
チャットツールの導入で、離れて働くメンバーに連帯感が
CHITCHAT!で案件ごとに「質問掲示板」を作ると、狙い通りメンバー同士で疑問を解決できるようになった。また、客先に行くメンバーの朝のリマインドメールや、急な欠員のピンチヒッター探しといった本部の業務の大幅な効率化、メンバー同士の連帯感の醸成、といった効果も出ている。
「以前は本部とそれぞれのメンバーが線でつながっている状態でした。それがメンバー同士つながって、面になったのです。今では、使いやすい入力フォームを自作した人がみんなにシェアするといった、ノウハウの共有もされるようになりました」
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