在宅も“複業”もOKな正社員、あります――“人材不足時代の求人”に新たな波(1/2 ページ)
“9時から5時”に縛られない働き方を提案することで優秀な働き手を確保する――。人材不足が叫ばれる中、こんなアプローチをする企業が徐々に増えている。こうした流れは企業が抱える課題をどこまで解決できるのか。
もし、あなたが転職するとしたら、新しい会社にどんな条件を求めるだろうか?
一般的には、仕事の内容、報酬や役職などの待遇、会社や業界の将来性といった観点で希望に合う転職先を探し、会社の雰囲気や文化も確認した上で行きたい会社かどうかを判断する――というケースがほとんどだろう。
最近ではそれらに加え、働く場所や時間といったワークスタイルの「柔軟性」に注目して会社を選ぶ人が、徐々に増えている。
それは、筆者が“新しい働き方”をテーマに行っている取材の中でも顕著に現れており、こんな印象に残る事例も出てきている。
- 子育てや介護のための地方移住と、それまでの経験やスキルを生かせる仕事を両立するために「リモート勤務」を認める会社に転職し、地方の自宅にいながら首都圏の企業の社員として働く会社員
- 海や山に囲まれた地方の過疎地にオフィスを開設し、サーフィンや農業などの趣味と仕事との両立を奨励することで、優秀な技術者の獲得に成功したIT企業
- 子供を連れて出勤できる職場で、同僚と助けあいながら子育てと仕事の両立をはかる母親たち
極端な例に思えるかもしれないが、「イクメン」や「パラレルキャリア」「Uターン・Iターン」といった言葉がよく聞かれるようになったことからも分かる通り、「家庭を大事にする」「趣味やボランティアに時間を費やす」「愛着のある場所に住む」といった価値観を大切にし、それとうまく折り合う仕事の仕方を求める流れは今後どんどん加速していくのではないだろうか。
在宅も“複業”もOKな正社員の求人情報を
そんな中、「働き方」を切り口にした新しい求人メディアが登場した。昨年12月にティーザーサイトがオープンした「Paraft(パラフト)」だ。特徴は“正社員ながら週5日の定時出社を求めない”求人案件を集めている点だ。対象は正社員だが、時差出勤や短時間勤務、在宅勤務、あるいは副業を認めるなど、柔軟な働き方を許容する企業の求人情報を掲載し、世の中に新しい働き方を提案していくという。
パラフトの正式なオープンは2月を予定している。掲載されるのはどのような企業なのか、今後「働き方」をウリにした求人は広がっていくのか、パラフトを運営するリライドの社長を務める中川亮氏に話を聞いた。
柔軟なワークスタイルが採用力の向上に結びつく
中川氏は、フリーランスのITエンジニア向けの仕事紹介サービス「PROsheet(プロシート)」を運営するシェアゼロの代表でもある。パラフトのアイデアは、プロシートの顧客企業の悩みを聞く中で得たものだという。
「プロシートはフリーランスのプロフェッショナルと企業をマッチングするというサービスで、企業としては人件費という固定費を抱えることなく、優秀な人材に仕事を頼めるということで大変喜んでいただいています。一方、プロシートのお客様にはだいたい設立3年目くらい、資金調達をしてさらに伸びていこうという段階の成長ベンチャーが多くいらっしゃいます。そういった会社は、組織の中にナレッジをためていくためにも、社員を増やして組織づくりをしていくということも重要な課題です。ですが、それがうまくいかず困っているという話をよく聞くのです」
創業メンバーの次に加わるメンバーということで、優秀な人材を求めているものの、まだ知名度も低く、大企業と同水準の報酬や福利厚生を提供することも難しい成長ベンチャーにとって、求める人材を引きつけることはなかなか難しいというわけだ。
だが、中川氏はそういった企業のワークスタイルに注目した。話を聞いてみると、さまざまな柔軟な働き方を実践しているケースが多いのだという。
「『うちのエンジニアは子どもが小さいので、保育園に迎えに行くために早く帰宅しています』とか、『週2日くらいは会社に来ないで自宅で仕事をしています』とか、個人の事情に配慮しつつ成果も出すという働き方を個別に工夫されていたりするんです。それが1つのヒントとなって、『働き方』を切り口とした求人メディアを立ち上げました」
「柔軟なワークスタイルが可能である」というメッセージは、知名度や資金力では大企業に太刀打ちできないベンチャー企業が、採用力を向上させるための切り札となり得ると、中川氏は考えたのだ。
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