在宅も“複業”もOKな正社員、あります――“人材不足時代の求人”に新たな波(2/2 ページ)
“9時から5時”に縛られない働き方を提案することで優秀な働き手を確保する――。人材不足が叫ばれる中、こんなアプローチをする企業が徐々に増えている。こうした流れは企業が抱える課題をどこまで解決できるのか。
まずはインターネット関連企業から
パラフトは、掲載内容に違わず柔軟な働き方ができるかどうか、企業の状況をきちんと見極めた上で求人情報を掲載していく方針だという。
「スタート時点では、インターネット関連企業20社を予定しています。やはりリモートで仕事がしやすい業種ですし、その中でも半数くらいはすでに柔軟な働き方をしている企業です。これから新しい働き方を取り入れるという企業の場合も、マネジメントの方法や必要なツールの導入など、我々やパートナーのノウハウを生かしてしっかりサポートしていきます」
働く場所や時間に柔軟性を持たせた上で効率よく仕事を進めるには、コミュニケーションやマネジメントのためにクラウドベースのツールをうまく利用することが不可欠だ。インターネット関連企業は、普段からそういったツールに接することが多いという点で、新しい働き方を導入しやすいのは確かだが、こうした動きは今後、他の企業にも広がっていくのだろうか?
必要なのは“マネジメント側の意識の変化”
新しい働き方を取り入れるために必要なツールや就業規則の導入等のノウハウは、先進企業の知見が、いずれ他の会社にもシェアされて行くだろう。しかし中川氏いわく、最も大きな課題となるのは「マネジメント側の意識」だという。
1つは、働き方にかかわらず仕事の成果を正当に評価できるかどうか。がんばる姿を見てきたからといって、“リモートで働く社員”よりも“会社に出社して働く社員”の方をひいきするようなことがあってはならない。
もう1つは、社員との対等な関係を作ることができるかどうか。
中川氏の会社では、例えばエンジニアであれば個人で開発したサービスを運営するなど、社員みんなが“副業”ならぬ“複業”を持っているという。副業は“本業以外に収入を得る手段”だが、“複業”は「どちらも本業」という働き方を指すと同氏。自社で一定の成果を出すならば、複業さえも推進するという考え方なのだ。
「経営者というのはみんな、社員には自社の仕事に100%コミットしてほしいという思いがあるでしょう。でも、100%コミットしてもらうとなると、当然、社員の要求やストレスはすべて会社にぶつけられ、会社もそれに応えようとしなければならない。会社が複業や起業を許容すれば、社員は収入面のリスクを分散できますし、不満やストレスが1社に向かうこともなくなる。社外の活動を通じて得た知見やスキルは会社の仕事に役立つこともあるはずで、会社にもメリットをもたらすと思います」
このような意識の変化は、一朝一夕には起こらないだろう。しかし、個人の側がワークスタイルに注目して就転職先を選ぶようになれば、これまでは採用力があった企業も従来と同じ条件では必要な人材を獲得できなくなるかもしれない。本当に困れば、インターネット関連企業やベンチャー以外の会社も、採用戦略、そしてワークスタイルを変えざるを得なくなるはずだ。
個人は目指す生き方から働き方を考える、企業は優秀な人材を採用し働き続けてもらうために、働き方にある程度の自由を認める。パラフトの登場は、そうした考え方が世の中に広まる兆しを感じさせる。
やつづか えり
1999年一橋大学卒。2009年デジタルハリウッド大学院修了。コクヨおよびベネッセコーポレーションで11年間勤務の後、フリーランスに。企業に対する教育系Webサービスやアプリの企画・開発支援を行うと同時に、組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』を運営中。さまざまな組織人にインタビューをし、多様な働き方、暮らし方と、それを実現するためのノウハウを紹介している。
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