“ライオンズ”の球団改革を支えたIT――野球業界ならではのSFA活用法(2/2 ページ)
観客動員は過去最低を記録、経営状態も赤字続きな上、プロ野球界の再編に伴う改革の波にも乗り遅れる――。そんな苦境から一転、観客動員数を伸ばし、黒字化を成功させた西武ライオンズ。そんな同社の営業チームを支えたITツールとは。
重視したのは「使いやすさ」と「カスタマイズ性」
SFAの導入にあたっては、ソフトバンクホークスが既に導入していたMicrosoft Dynamicsと、システムインテグレータが提案するサイボウズのkintoneを検討したが、同社が必要とする機能については、「さほど差がない」というのが正直なところだったという。
そうした中で重視したのは、使いやすさとカスタマイズ性だ。
西武ライオンズの営業マンは、20〜50代と年齢が幅広く、シニア世代のスタッフの中には、システム関連に強くない人もいる。そうしたスタッフにも使いやすい見た目(ユーザーインタフェース)であることが重要で、Dynamicsは「文字の大きさや配置などが、日本にはなじみが薄いかなという印象を受けた」という。「kintoneは日本人に自然に受け入れられるかな、というところがありました」(同)
カスタマイズ性については、独立した情報システム部門を持たない企業でも扱えるかどうかがポイントだった。「西武ライオンズは社員数70〜80人の中小企業で、独立した情報システム部門がありません。システム関連の特別な知識がないスタッフでも運用できるかどうかは重要でした」(同)。
同じ理由で、サーバの運用やメンテナンスに手がかからないクラウド型サービスであることも、条件の1つに挙がっていた。「専門の部署がないので、5年に1度のサーバのリプレースは厳しい」
こうした検討の結果、西武ライオンズが選んだSFAがkintoneだった。
“野球業界ならでは”のセールストークが商談を後押し
SFAの導入で、「どの顧客にどんな案件をいくらで提案しているか」「どんなプロセスで商談を進めると成功につながるのか」といった情報が社員間でで共有されるようになり、営業の効率化につながったと光岡氏。成功事例をほかのスタッフと共有しやすくなったことから、過去の商談情報を参考にして案件を成約させる例も出てきたという。
「野球業界特有だと思うのですが、野球の話から入っていくと提案を聞いていただけたり、成約につながることがあります。提案先の社長が“誰のファンなのか”といった細かい情報を蓄積し、共有することがいかに大事かということが分かってきました」(光岡氏)
クラウド上に集約された情報をリアルタイムで共有できるため、上司が部下の進ちょくを確認しやすくなったのも導入効果の1つ。さらにkintone上のアプリ同士を連携させ、相互に紐付けられるのも便利だという。
「例えば案件管理のアプリで『見積作成』のボタンを押すと見積書に数字が入り、『見積書出力』というボタンを押すと、帳票を発布するサービスにデータが渡され、ロゴの入った見積書が出てきます」(光岡氏)
今後は、会計システムとの連携を図っていくほか、営業以外の部署での拡大展開も検討している。
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