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300円ショップ「3COINS」の“何度でも行きたくなる店”を作る仕掛け(1/2 ページ)

小売店にとって、店舗の商品陳列は売り上げに直結する重要なファクターだ。客のニーズに応える形で、店舗へリアルタイムにレイアウトの指示ができないか――そんな課題を抱えていた“300円ショップ”があった。

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photo 300円ショップ大手の「3COINS(スリーコインズ)」(出典:パル)

 買いやすい価格帯で店内の商品価格を統一し、お買い得感を感じさせる「均一価格」ビジネス。デフレが続いた中でも成長を続けた「100円ショップ」が注目を集めて久しいが、今では300円、500円、1000円などさまざまな価格で統一した店舗が登場し、市場を広げている。扱う製品もインテリアや服飾、家電製品などバラエティに富んでおり、既存小売店のビジネスを脅かしている。

 服飾雑貨や生活雑貨を取り扱う“300円ショップ”大手の「3COINS(スリーコインズ)」も、このトレンドに乗って順調に業績を伸ばしている。この4年間で店舗数が約2倍に増え(2015年3月現在、133店舗)、「駅ナカ」出店や1000円均一など新業態を展開しているのだ。

 チェーンストアを展開する小売業では、店舗数が増えるにつれて、店舗と本部間の連絡や情報交換が増えて業務が煩雑になる傾向がある。特に3COINSでは、低価格の雑貨ブランドならではの課題を抱えていた。

情報の見落とし、タイトルで工夫するも防げず

 3COINSのような雑貨屋はアパレルなどと異なり、ほぼ接客がなく、来店客が自発的に商品を選ぶ“セルフサービス”型の業態だ。客が店員に聞かなくても分かるように、商品陳列を細かく工夫する必要がある。本部は売れ筋に沿った商品の入れ替えや、客のニーズに基づいた陳列方法を各店舗に指示していたという。

 3COINSを運営するパルは、これまで独自に開発した社内ポータルサイトを10年以上使っていたが、情報を配信しても、指示に対応したか確認できず、スーパーバイザーが逐一電話で確かめるという運用を行っていた。それでも、情報の見落としは防げず、特定の店舗だけ取り組みが遅れ気味になる問題がしばしば発生していた。

 店舗側が受け取る情報も、時系列で並ぶだけで優先順位が分からないことも大きな課題だった。「タイトルの付け方などで工夫をしていましたが、効果的なアクションにつなげるのは困難でした。また、容量制限で画像を使った説明がしにくいなど、使い勝手やスピード面でも不満がありました」(3COINS スーパーバイザー 角屋悠太氏)

“走りながら”仕様を変えていく

 ポータルサイトに変わる、新たなシステムを探し始めたのは2014年5月ごろ。「基幹系業務システムを含む、大規模な全社システムのリプレースを進めるなかで、この課題を解決するソリューションを検討し始めた」(パル 執行役員 業務改革推進室長 野口一成氏)という。Google Appsなどのクラウド系ソリューションを検討していたが、商品の陳列方法を本部からの指示だけでなく、各店舗で共有できるシステムを実装しているなど、販売に特化した設計になっていたことが決め手となり、ドリーム・アーツの「Shopらん」を導入した。

 導入にあたっては、運用しながらシステムを変更できる点も重視した。「試験をしてから導入を決めるというより、導入を決めてから試験をしたというのが正直なところです。新ツールへの移行は日常業務と並行して行うことになるので、一度に進めることはできません。そこで、運用するなかで適宜使い方を変える方針を採りました」(野口氏)

 移行する際に、ポータルに記録していた情報を取捨選択をする作業に苦戦したものの、実運用をしながらルールを作るというテスト方法で、1カ月後に正式に導入できる状況が整った。こうして2014年8月に3COINS全店および、同じく雑貨を扱う「salut!」「Lattice」の計181店舗で運用を開始した。

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