NECがシンガポールに研究拠点を設立した“3つの理由”:未知のソリューション開発への挑戦(3/3 ページ)
中期経営計画で「社会ソリューション事業への注力」を打ち出しているNEC。しかし、これまで半導体やデバイスを中心に開発をしていた同社は、新しいソリューションの“開発方法”が分からないというカベにぶつかった。このカベを乗り越えるカギが「シンガポール」にあるという。
新たなセーフティソリューションを開発
NECラボラトリーズシンガポールでの研究活動は実を結んでいる。その代表例が顔認証技術をベースとしたセーフティソリューションだ。日本で開発した群衆監視技術(群衆の中から同一人物を特定して、極度の“うろつき”など異常な行動を判定する)を、シンガポールの地下鉄駅構内に多数のカメラを設置し、約4カ月の間実験したという。
「高度な顔のマッチングエンジン技術を、街の安全に役立てるという価値に変えたわけです。この実験はシンガポールの10の省庁とともに進めました。犯罪や事故の検知し、関連省庁にアラームを送信する仕組みです」(山田氏)
こうした実験結果を基に、同じくシンガポールにある「グローバルセーフティ事業部(GSD)」がソリューションを開発、アルゼンチン ティグレ市の街中映像監視システムなどの導入実績もできている。このほか、渋滞改善や高齢者の見守り、エネルギーマネジメントなどのソリューションも事業化へ向けて研究を進めているという。
舞台が日本からシンガポールに、でもミッションは変わらない
山田氏は、このNECラボラトリーズシンガポールでの活動に携わる前は「C&Cイノベーション研究所」(NEC関西研究所内に2007年に設置、現在は中央研究所に統合)の所長として活躍していた過去がある。同研究所は30年先を見据え、将来の情報通信システムの研究を行っていたそうだ。
「C&Cイノベーション研究所では、30年先のぶっ飛んだ未来を考えることと、未来に起こりうる課題の種を探すという2つのテーマを柱に研究してきました。場所は奈良からシンガポールに移りましたが、未来に起こりうる課題の種を探すというミッションに関しては、“ついに回り出したな”という感じで、同じテーマを追いかけている。研究としてはつながっているんだなと感じます」(山田氏)
現在もクライアント企業のエグゼクティブや大学などの組織と、ワークショップなどを通じて新たな発見が出てきているという。表層ではなく、根本的な問題解決を実現できるソリューションを作る、これが彼が追い続ける目標だ。
「シンガポールで何をしているの? と聞かれたら『新しいソリューションの開発手法を考える実験です』と答えるようにしています。まあ『あいつ、また変なことやってんな』と思われているかもしれませんがね(笑)」
テクノロジーをどうソリューションに生かし、どのようにイノベーションを起こすか――。これからもNECと山田氏の挑戦は続いていく。
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