オールジャパンで取り組む「IT農業」の潜在需要:Weekly Memo(1/2 ページ)
産官学が連携したオールジャパン体制による農業IT化の取り組みが加速している。その潜在需要は「グローバルで340兆円市場が対象」との見方も。どういうことか。
「アグリプラットフォームコンソーシアム」の役割
慶應義塾大学SFC研究所を中心に産官学が連携して農業分野のIT化を推進している「アグリプラットフォームコンソーシアム」は3月26日に同大学内で記者会見を開き、1年後をめどに、農業情報の標準化に関わるガイドラインを立案して政府に提案することを柱とした活動方針を発表した。
記者会見では、同コンソーシアムのメンバーである富士通、NEC、日本IBM、日本マイクロソフト、セールスフォース・ドットコム、クボタ、ヤンマーといった主要ITベンダーや農業機械メーカーをはじめ、農林水産省、総務省、内閣官房、理化学研究所、および複数の大学の関係者も登壇し、オールジャパン体制であることを印象付けた。
同コンソーシアムの代表を務める慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授は、今回発表した活動方針の狙いについて次のように語った。
「農業分野のIT化についてはこれまでもさまざまな取り組みが行われ、多くの知見が蓄積されてきている。だが、今後IoT(Internet of Things:モノのインターネット)によってもたらされるビッグデータを活用していくうえで、これまで蓄積された知見を生かしていくためにも、現状でばらばらな用語やデータ形式などを共通化し標準化する必要がある。このコンソーシアムではそのガイドラインを立案し、農業情報流通プラットフォームの構築を推進して日本の農業の活性化に貢献していきたい」
ちなみに、農林水産省も「平成26年度農林水産分野におけるIT利活用推進調査」において、
- 複数の企業や団体による独自規格に基づくシステムの導入によって、異なるサービス間での情報連携が困難になっている
- 農業情報の知的財産としての取り扱いなどが不明確なまま情報蓄積が進んでいる
といった問題点を指摘している。
こうした問題を解消すべく、政府のIT総合戦略本部は横断的な農業IT施策として、昨年(2014年)6月に打ち出した「農業情報創成・流通促進戦略(関連リンク参照)」に、今後取り組むべき具体的な課題に向けたガイドラインと、今後の取り組み方針であるロードマップを示している。同コンソーシアムはそのガイドラインやロードマップに従って課題を解決するための推進団体という位置付けとなっている。
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