米国で進むビッグデータの相互運用性の標準化とセキュリティ:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/3 ページ)
2014年5月にホワイトハウスがビッグデータ報告書を公表して早一年が経ち、米国ではビッグデータに関わるイノベーションと同時に標準化の活動も急ピッチで進んでいる。今回は最前線の動向をお伝えしよう。
包括的な枠組づくりを支えるビッグデータのユースケース
NPD-PWGにおけるステージ1の取組の成果物が、2015年4月に草案が公表された「ビッグデータ相互運用性フレームワーク・バージョン1.0」であり、ドキュメントは以下の6つの章立てで構成されている。
- M0392: Draft SP 15001 Volume 1: Definitions
- M0393: Draft SP 15002 Volume 2: Taxonomies
- M0394: Draft SP 15003 Volume 3: Use Case & Requirements
- M0395: Draft SP 15004 Volume 4: Security and Privacy
- M0396: Draft SP 15005 Volume 5: Architectures White Paper Survey
- M0397: Draft SP 15006 Volume 6: Reference Architecture
- M0398: Draft SP 15007 Volume 7: Standards Roadmap
図1は、バージョン1.0の草案で示されたNISTビッグデータ・リファレンス・アーキテクチャの全体イメージであり、システムオーケストレーター、データプロバイダー、ビッグデータアプリケーションプロバイダー、ビッグデータフレームワークプロバイダー、データコンシューマー、セキュリティ/プライバシー・ファブリック、マネジメント・ファブリックが主要な構成要素として示されている。
図1:NISTビッグデータ・リファレンス・アーキテクチャ(出典:NIST Big Data interoperability Framework Version 1.0 Working Drafts. 2015年4月)
また、個別領域の具体的なユースケースを重視しているのも、ビッグデータ相互運用性フレームワークの特徴だ。例えば、「M0394: Draft SP 15003 Volume 3: Use Case & Requirements」では、政府機関(4件)、商業(8件)、国防(3件)、健康医療/ライフサイエンス(10件)、ディープラーニング/ソーシャルメディア(6件)、天文/物理(5件)、地球/環境/極地科学(10件)、エネルギー(1件)のユースケースが収録されている。図2は、健康医療/ライフサイエンス分野のユースケース例(病理診断画像化/デジタル病理診断)を示したものであり、Hadoopによる非構造化データの分散処理がベースになっている。
図2:健康医療/ライフサイエンスのユースケース例、病理診断画像化/デジタル病理診断(出典:NIST Big Data interoperability Framework Version 1.0 Working Drafts. 2015年4月)
ビッグデータのセキュリティ/プライバシーに関しては、バージョン1.0の草案の「M0395: Draft SP 15004 Volume 4: Security and Privacy」で、以下のような構成で整理されている。
- セクション1:イントロダクション
- セクション2:ビッグデータ特有のセキュリティ/プライバシー課題
- セクション3:セキュリティ/プライバシーに関するユースケースの例示
- セクション4:セキュリティ/プライバシーの予備的な分類
- セクション5:NBDRA全体に関わるNISTビッグデータ・セキュリティ/プライバシー・リファレンス・アーキテクチャの詳細
- セクション6:セクション3で示されたユースケースのNBDRAへのマッピング
- Appendix A:ビッグデータ採用のためのセキュリティ/プライバシー関連トピック候補
- Appendix B:クラウド技術に関する情報
- Appendix C:分類で示された用語/定義一覧
- Appendix D:本文書で利用された略語一覧
- Appendix E:本文書の参考文献一覧
なお、NPD-PWGのフレームワーク策定作業には「クラウドセキュリティアライアンス(CSA)」のビッグデータワーキンググループ(BDWG)からウィルコ・ヴァン・ジンケル氏(Verizon)とアルナブ・ロイ氏(米富士通研究所)が参画しており、本連載第1回で取り上げた「セキュリティ/プライバシーにおける10大脅威」の「インフラストラクチャセキュリティ」「データプライバシー」「データ管理」「完全性と事後対策的なセキュリティ」なども引用されている。現在CSAのBDWGは、ユースケース集「Big Data Security and Privacy Handbook : 100 Best Practices in Big Data Security and Privacy」の策定作業を行っているところだ。
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