チームが「思ったように回らない」時の対処法:上司はツラいよ(2/2 ページ)
このあいだ言ったはずだから、分かってくれているはず――。それはリーダーの思い込みに過ぎない。チームに大事なことを伝え、それを実行してもらうために重要なこととは。
3カ月後に覚えているのは……この程度?
上司は、年初やチームの立ち上げに際して、「年頭所感」「チームビジョン」「仕事への想い」「部下に期待すること」などを伝えることは多いだろう。しかし、メッセージが部下にしっかり伝わっているかというと……ちょっと怪しい。
メンバーの中には、ほかのことに気を取られて最初から聴いていない人もいるだろうし、聴いた時点では理解したつもりでも、日が経つにつれ忘れていってしまう人もいる。さらに人によっては、上司の言葉を完全に誤解・曲解している可能性もある。
例えば、上司がチームのキックオフミーティングで、こんな風に述べたとする。
「このチームでは、顧客満足度を追求することが第一だけれど、利益とのバランスも大切だ。それに、メンバー一人ひとりが仕事をしながら、成長している実感が持てるということも忘れてはいけない。組織と個人の両方がハッピーになり、その結果として、顧客から『またお願いします』と言われるような仕事をする集団でありたい。みんなもそういう意識で共に頑張ってほしい」
メンバーは、この話をどれほど覚えているだろうか。
キックオフミーティングから3カ月くらい経った時、メンバの一人が愚痴をこぼす。「顧客満足度も大切だと思うけど、メンバー一人ひとりの満足度だって大事だと思うんですよね。そのためには、メンバーの成長も大切にしてほしいです」
上司は驚く。「え? キックオフミーティングで顧客満足度も利益も、メンバーの成長も大事だって言ったよね」とメンバーに問うと、「え? そんな話、なさいましたっけ?」とぽかんとされる始末。かように人の記憶というものはあいまいなものなのだ。
だから上司は、一度伝えたくらいで伝わったと思ってはいけない。
仕事をする上で重視している価値観やチーム運営に関する思いなど、メンバー同士で共有しておきたい「大切なこと」は、しつこいくらいに何度でも繰り返し言うことだ。部下が「もう分かりましたから」「耳にタコができました。顧客満足度と利益とメンバーの成長ですよね」などと苦笑されるくらい伝え続けるのがちょうどいい。
「メンバーはなぜ、私の想いを分かってくれないんだろう」
「どうしてメンバーが思ったように動いてくれないのだろう」
そんな疑問に感じたら、部下の理解力を嘆く前に、自分の言葉がしっかり伝わっているかどうかを疑ったほうがよい。1回では伝わらない。何度でも何度でも浸透するまで言い続けるしかないのだ。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”」。ほかにも「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)、「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)などの著書がある。
- @IT自分戦略研究所の連載「田中淳子の“言葉のチカラ”」はここから。
- シゴトに効く姉妹連載「そのひとことを言う前に」はここから。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
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