チームは“生もの”、管理しないとすぐ腐る:そのひとことを言う前に(1/2 ページ)
「ただの仲良しグループ」も「ギスギスした関係」も超え、やっとチーム内の雰囲気が安定してきたと思ったのに、それでもパフォーマンスが上がらない。ですが、ここで諦めてはいけません。ここからがリーダーとして正念場といえるでしょう。
連載「そのひとことを言う前に」
職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。
コミュニケーションがダメなチームは、いつまでたっても成果が出ない。リーダー(プロマネ)として“チーム内で起きているコミュニケーション”に目を向け、成果を出せるいいチームを作る――このテーマもいよいよ3回目です。
ここまで2回の記事を通して、「和気あいあいの仲良し状態」も「衝突だらけのギスギス状態」もチームとしてベストな状態ではないとお話ししてきました。
心理学者のタックマンが提唱した「タックマンモデル」では、こうした状態を乗り越えると、メンバーが安心して仕事にあたれる“Norming(規範期)”という状態に入るとしています。そのためにも、リーダーはメンバー間の衝突や不満に向き合い、一つ一つをルール化して処理する必要があるのです。
復習:パフォーマンスの高いチームが生まれるプロセス「タックマンモデル」
- Forming(形成期):お互いのことや何のために集まったかなど、目的や利用できる資源などが分からない状態
- Storming(混乱期):チームの目的やお互いの役割などを理解したあとに、いざこざや対立などが発生している葛藤状態
- Norming(規範期):チーム内の規律ができ、関係性が安定している状態
- Performing(機能期):チームに結束力と一体感が生まれ、チームの力が目標の達成に向けられる状態
- Adjourning(散会):何らかの理由で、チームが解散する状態
さて、さまざまなルールが決まれば、安定して成果出せるかというと、そううまくはいきません。あなたのチームでは、このような会話が交わされていませんか?
<とある会議での場面>
リーダー:何かここまでで意見はないかな?
メンバーA:特にありません。
メンバーB:はい、大丈夫です!
リーダー:では、この件はこれで決定ということで。
<業務終了間際に>
リーダー:急で申し訳ないけど、今日このタスクを対応しなくてはいけなくて、誰か対応できないかな?
メンバーC:すみません、ちょっと……。
メンバーD:うーん。じゃあ、私がやります
リーダー:ありがとう、Dさんお願いします。
メンバー間の理解は深まったが……
こうした会話は一見、何の問題もなさそうに見えます。人間関係による衝突もなく、はたから見れば、スムーズに仕事が回っているようにも見えるでしょう。しかし、ここにはメンバー同士のことが理解できたからこそ起こりうる“落とし穴”があります。先ほどの会話の中には、メンバーのこんな(本音)が隠されているかもしれないのです。
ケースA:言っても言わなくても同じこと
リーダー: 何かここまでで意見はないかな?
メンバーA: 特にありません(言っても言わなくても、変わらないから。何も言わなくていいよね)。
メンバーB: はい、大丈夫です!(意見を言うと即担当になるんだもん。言ったもん負けみたいになるし……)
リーダー: では、この件はこれで決定ということで。
メンバA+B: (やっぱりねー。言わなくてよかった)
ケースB:あの人に任せれば大丈夫
リーダー: 急で申し訳ないけど、今日このタスクに対応しなければいけなくて、誰か対応できないかな?
メンバーC: すみません、ちょっと……(NG出せば、最後はDさんがやってくれるだろうし)
メンバーD: うーん。じゃあ、私がやります(Cさんの方が先輩だし、仕方ないよな)。
リーダー: ありがとう、Dさんお願いします。
これらは両方とも「Norming」がうまくはたらいていない例です。メンバー間の理解が進んだために新たな“諦め”や“甘え”が生まれています。このほか、定めたルールが“なあなあ”になっていないかにも気をつけましょう。「昼休み明け、13時に午後の業務が開始するはずが、数人でランチに行ったメンバーだけ帰ってこない」といったことになっているチームは要注意です。
ルールができたのに、ゆがみが発生する。これはチーム内に新たな“暗黙知”ができ始めているサインです。
関連記事
- ただの“仲良しグループ”は“チーム”ではない
チームのリーダーとして、「チーム内今どのようなコミュニケーションがされているか」という点に意識を向けたことはありますか。一見衝突がなく、和気あいあいとしているように見えても、それはチームとしてベストな状態ではないのです。 - リーダー、プロマネが知っておくべき「会議のキホン」
会議の決定事項に取り組まない部下がいる……。そんな悩みを抱えたことはありませんか。今回はリーダーが知っておくべき「会議運営の基本」を大解説。ダメな会議は非効率なばかりか、部下のモチベーションを大きく下げてしまうのです。 - 部下にうまく仕事を“催促”する、たった1つの方法
仕事を頼むとき以上に、相手に“催促”をするのは気を使うもの。日常生活でもそうだと思います。言った相手のモチベーションを下げないよう、“相手の状況をくんだ表現”で伝えたいことをしっかりと伝える姿勢が大切です。 - 部下の“放置プレイ”が一番マズい――「コミュニケーション飢餓」の恐怖
相手とのコミュニケーションでミスをしてしまったらどうしよう……。そう思って、部下や同僚とどう接していいか分からなくなった経験はありませんか? しかし、コミュニケーション不足も大きな「失敗」。もっと大変な状況に陥る可能性もあります。 - 仕事の“やる気スイッチ”は5タイプに分けられる
仕事で後輩や部下のやる気を高めるには、どう指示を出せばよいか。実は多くの人が間違った指示をしがちです。相手のやる気になるポイントを探すことが大事ですが、気付かないうちに自分の価値観を相手に押し付けていることも……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.