“脱Excel”でクレーム半減、三井住友海上の挑戦(1/3 ページ)
コールセンターへの電話がつながらなくてイライラ。そんな経験がある人は多いはず。これは企業にとっても大きな悩みの種だ。人工知能など、コールセンターへのIT導入を進める三井住友海上火災保険は、オペレーターの応答率を高める新システムを導入したという。
コールセンターに問い合わせてみたものの、電話が集中しているためか、まったくつながらなかった――そんなイライラを経験したことがある人は多いのでは。しかし、“電話がつながらない”という状態は早晩なくなるかもしれない。実は今、人工知能やBIツール、ビッグデータ分析など、コールセンターがITの力で大きく変わろうとしているのだ。
三井住友海上火災保険は、コールセンターへのIT導入を積極的に進める1社だ。文章や音声をはじめとする自然言語で応対履歴を分析するため、IBMのスーパーコンピュータシステム「Watson Explorer」の試験導入を始めたほか、応答率を高めるため、入電を予測するシステムを導入したという。
コールセンターの応答率が低下、一体なぜ?
同社のコールセンター「お客さまデスク」に在籍しているオペレーターは約110人。彼らは年間約66万件の電話に対応しているが、目標の応答率に届かないことが大きな問題になっていたという。
「ほぼ全ての手続き書類に、お客さまデスクの電話番号を記載するようになった2008年ころから問い合わせが急増し、応答率が下がってしまいました。2013年時点で応答率は約85%程度。大体9割を切ると『つながらない』と感じる方が急増します。つながらなかった方は再び電話をかけてくるので、悪循環に陥ってしまうのです」(同社 コンタクトセンター企画部 企画チーム長 佐久間美奈子さん)
応答率が下がった当初は、原因をリソースの不足としていたが、効率的なシフトが組めていないことも問題点として浮かび上がってきた。同社はコールセンターを東京、神戸、札幌と3カ所に展開しているが、それ故にシフトの作成や管理が困難だったという。
保険のコールセンターには、自動車・火災などの各種保険の内容や満期に関する質問など、さまざまな種類の相談が集まる。複雑な処理を迫られても対応できるよう、各分野に強い人員も配置しなければならない。
「予測した入電数から人数を割り出すのが一般的かと思いますが、各拠点でバラバラに入電を予測していたため、情報が錯綜していました。また、当時はExcelで入電予測を管理しており、各分野の質問に合わせた数々のファイルを整理・統合するのに多くの時間がかかっていたのも問題でした」(コンタクトセンター企画部 企画チーム 寳寄山直樹さん)
さらに、予測の精度が甘いため、仕事量の管理に明確な方針が立てられず、ある拠点のリソースが足りないときに、別の拠点でカバーするといったような互助体制も整っていなかったそうだ。「やはり、人力でのリソース管理は厳しい」――そこで同社は、労働量の分析と人員配置の最適化を行うソリューション、WFM(Workforce Management)システムの導入を決めた。
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