第16回 「○×表」を鵜呑みにしすぎ:テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(1/2 ページ)
ITシステム選定には「○×表/機能比較表」を用いますね。しかし、日本のエンドユーザーはそれを鵜呑みにしすぎです。むしろ操られてしまっていると感じることさえあります……。
以前も少し話題に出しましたが、日本のIT担当者は“使わない機能”まで高く評価する傾向があります。
私も家電製品などを買う際は、少しくらいの価格差なら多機能なものを選びますので、その気持ちはとてもよく理解できます。イメージが湧かないがゆえに「イザという時のために」「もしかしたら」という気持ちが芽生えるのではないかと思います。
ITインフラはコンピュータ機器なだけあり、家電製品とは比較にならないくらい複雑で多機能です。目では見えない機能などもたくさんありますので、実際に使うかどうか、自社の運用に乗るかどうかを判断するのは簡単ではありません。
だからこその「機能比較表」「○×表」なのです。しかし、日本のエンドユーザーは鵜呑みにしすぎというか、むしろ操られてしまっていると感じることさえあります。
「比較表」はどうにでも作れてしまう
比較表は日本だけの独自文化というわけではありません。「Comparing」や「Comparison」という言葉でネット検索をすれば英語で書かれた比較表がヒットしますし、海外のフォーラムなどでもたびたび話題に上がります。
では、日本人と欧米人の違いはどこにあるのでしょう?
私は両者の違いを「どれくらい鵜呑みにするか」と考えます。ベンダーから提供を受けた比較表や○×表を、そのまま製品選定の判断材料に使っていませんでしょうか。役員への稟議や報告書にまで流用していませんでしょうか。
お気づきの方も多いとは思いますが、比較表や○×表などは自社の製品や提案・ポジションを有利に持っていくための“営業ツール”の一種です。提供側、つまりベンダーやメーカーに在籍する営業担当者やマーケティング・プリセールス担当者の十八番になっています。
1つ例を挙げてみましょう。
ある顧客は、外回りの営業担当者向けのノートPCを検討しており、いつも取り引きをしているベンダーにA社製・B社製の両モデルの比較表を依頼しました。依頼を受けた取引先は、競合他社がB社製品でこの顧客にアプローチを仕掛けているという情報も耳にしています。
この状況下で、作成依頼を受けたベンダー担当者はどのような比較表を提出するでしょうか。言うまでもなく、自分の顧客を奪われないために公式情報をベースにしながらも、少し“調整”を行うはずです。
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