“経験と理論”がつながったとき、“脱ツラい上司”への道が見えてくる:上司はツラいよ(1/2 ページ)
リーダーともなると、いろいろツラいことが多いもの。しかし、リーダーとしてのさまざまな経験がマネジメント理論にひもづけられると、自分自身も納得がいくし、部下に話す際の説得力も増す。その積み重ねがリーダーに磨きをかけていくのだ。
もうずいぶん前の話になるが、社外から鳴り物入りでやってきたマネージャがいた。採用した人たちが「すごい人が来るから」と繰り返すので、私たちは「怖い人だったらどうしよう」「いきなり全否定されたらどうしよう」と戦々恐々としていた。
彼がやってくる日までの数週間は想像が膨らむ一方で、声が大きくて勢いのある、強面な人の姿を頭の中に浮かべては皆で心配していた。
そしてついにマネージャと対面する日がやってきた。実際の彼は、想像していたような強面ではなく、ソフトなゆったりした口調で話す人だった。私たちはすっかり拍子抜けしてしまった。
とはいえ、“いつ、大ナタを振るわれるか”という怖れは消えなかった。いや、大ナタを振るわれるのは構わないのだが、その変化が非常に大きなものだった場合、自分たちはうまくやっていけるだろうか、と不安に思っていたのだ。
しかし……新しいマネージャが着任して2週間が経過したが、何も起こらなかった。
1カ月経った。
マネージャは特に行動を起こさなかった。
2カ月経った。
まだマネージャは地味に働いていた。
「あれ? 恐れる必要などない、“普通”の人なのでは?」と部下たちが思い始めた頃、突然、組織内のルールや会議の仕方が変わることになった。マネージャが「変える」と言い出したのだ。
部内会議でマネージャはこう話した。
「入社して3カ月ほど経ちました。ここの仕事がどうなっているのか理解しようと、全員と面談し、それぞれが考えていることや困っていること、やりたいことなどを聴きました。かなりの数のお客さまともお目にかかりました。ここでの仕事は前職とずいぶん性質が異なるため、把握するのに時間がかかりましたが、そろそろ自分が考える改革や改善をしてみようと思います」
そのとき私は、「ほぉ〜。この3カ月は改革の準備をしていたのか」と得心した。
改革の前にすべきことは
新任マネージャは、周囲からリーダーシップを発揮することが期待されている。とはいえ、いきなり大改革を打ち出してもうまくいかないことが多い。
例えば、着任して2週間くらいで、「ここでの会議の仕方、おかしいので変えましょう」「この会社のこの業務フローは非効率なので、こう変更してください」などと言われたら、部下たちはどう思うだろうか。
「ここのやり方をちゃんと理解した上で言っているのか?」
「よそからきて、何を言っているんだ?」
「いろいろな事情や経緯があってこのやり方をしているのだから、簡単には変わらないよ」
「変える」ことを期待されているはずなのに、いざ、「変える」と宣言すると、抵抗が起こるだろう。なぜ、抵抗されるのかと言えば、新任マネージャと部下との間に、まだ信頼関係が築かれていないからだ。
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