観客増の切り札誕生!? プロ野球初のハッカソンに行ってきた(2/4 ページ)
ITを使って、昔では考えられなかったような、野球の新しい楽しみ方を考えられるのではないか――そんなテーマに興味を持った44人が集まり、プロ野球界で史上初となるハッカソンが開催された。パ・リーグを“ハック”したその結果は……?
球場で楽しく騒ぐ体験を――「ベースビール」
準グランプリに輝いたアイデアは、加速度センサーを組み込んだメガホンなどの応援グッズで、球場のボルテージを検知し、最高潮の状態になると球場の一角からビールが降ってくるという「ベースビール」だ。
“リアルな場ではしゃぎたい”という若年層ならではのニーズに着目し、チームの優勝時などに行われる「ビールかけ」をモチーフに、球場でビールかけの気分を味わえることをコンセプトとしている。応援グッズを使った仕掛けにすることで、場の一体感を共有でき、野球のルールをあまり知らない人でも盛り上がりを楽しめるという。
ビールかけ気分を味わった後は、自分たちが楽しむ様子をSNSでシェアできる機能も用意。“楽しさあふれる写真をSNSでシェアしたい”という欲求も満たせる。ビールかけ専用の席を用意したり、ビールが降ってくる仕掛けづくりなど、実現までにはさまざまな障壁があるものの、若いファンが少なくなっているという問題に対し、ルールを知らない人でも盛り上がれる要素が入っていた点が評価された。
株に投資する感覚で各選手を応援――「カブドラ」
グランプリに輝いた「カブドラ」は、株式のように選手を指名して投資し、選手の成績(活躍度)によって付与されたポイントを、観戦チケットやグッズ購入に充てられるサービス。プロ野球の観戦や視聴に消極的だったノンコア層に対し、株というゲーム性を用いてWebとリアル(球場)両方の体験を提供するのが特徴だ。
株価は打点や出塁数、盗塁、得点(野手の場合)といった要素から算出され、試合が終わるごとに変化していく。各選手に投資する際には、参考としてパ・リーグ イノベーション APIを使い、過去のプレーを検索して確認できる。「選手を株に見立てる」という斬新な視点が評価された。
2軍好き(!)という野球ファンのメンバーが抱えていた「自分の応援している選手が活躍するとうれしいが、見返りがないのが残念」という不満から生まれたこのアイデア。一過性のものではなく、息の長い野球ファンが増えてほしいという。
ちなみにパッカソンの賞品は、好きな選手のサインが入ったパ・リーグ6球団のユニフォームや、“特別な体験付き”という野球観戦チケットなど。野球ファンにはたまらないアイテムの数々に会場は沸き上がった。
表彰式では、PLMの村山良雄社長が「パ・リーグのみならず、プロ野球界全体で活用できそうな提案をたくさん頂きました。私からの提案だが、優勝したチームの方々には、アドバイザーとして2カ月に1度くらいのペースで、実務的な関わりを続けていければと思っています。各球場に入れるパスも用意するつもりです」と宣言。ハッカソンで出たアイデアを実現する意欲を見せ、球界初の試みは大盛況のうちに幕を閉じた。
関連記事
- オリックス・バファローズはいかにファン会員データを“宝の山”に変えたか
シーズン序盤からの快進撃そのままに、ついには2014年のパ・リーグ優勝に迫りつつあるオリックス・バファローズ。チームの成長に足並みをそろえるかのように球団事業も改革を進めて大きな成果を上げている。そこに至る背景を取材した。 - 「科学」と「アナログ」の融合でファンを急増させたオリックス・バファローズ
オリックス・バファローズが運営する公式ファンクラブ「BsCLUB」は、この1年間で1万人以上も会員数を伸ばしている。そのわけとは――。 - なぜファンは西武ドームに何度も詰めかけるのか
2007年に観客動員数がプロ野球全球団で最下位になった埼玉西武ライオンズ。そこから“奇跡”のV字回復を遂げ、過去5年間でファンクラブ会員のチケット売り上げは約3倍に。果たしてその陰にはいかなる取り組みがあったのだろうか――。 - 「勘と経験頼み」の職人集団から脱却 ソフトバンクホークスがデータ活用で目指すもの
古くからデータ活用が盛んに行われてきたプロ野球だが、テクノロジの進化によって新たな動きが生まれつつある。「KKD(経験、勘、度胸)」からの脱却を目指してデータ活用を進めているソフトバンクホークスに取り組み内容を聞いた。 - “ライオンズ”の球団改革を支えたIT――野球業界ならではのSFA活用法
観客動員は過去最低を記録、経営状態も赤字続きな上、プロ野球界の再編に伴う改革の波にも乗り遅れる――。そんな苦境から一転、観客動員数を伸ばし、黒字化を成功させた西武ライオンズ。そんな同社の営業チームを支えたITツールとは。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.