高校生も選出、日本の未来を担う7人の“スーパークリエイター”(1/5 ページ)
ITでイノベーションを生み出す若い人材を発掘する「未踏事業」。同事業を主催するIPAが、2014年度に優れた成果を上げた「未踏スーパークリエータ」7人を選出した。彼らが生み出した“未踏”のサービスとは?
「まさに“未踏”。シリコンバレーであれば、もう10億円単位のお金が付くレベルだ――」
今年も突き抜けた才能を持った若きクリエイターが現れた。情報処理推進機構(IPA)の未踏事業で選出された、2014年度の「未踏スーパークリエータ」たちだ。
「未踏事業(未踏IT人材発掘・育成事業)」とは、ITを駆使してイノベーションを生み出す若い人材を発掘、育成することを目的とした事業。誰も足を踏み入れたことがない、世界初の技術を見いだすべく、優れたアイデアと技術力を持った「未踏クリエータ」を毎年選出し、産業界や学術界で活躍するプロジェクトマネジャー(PM)の指導のもと、アイデアの実装に挑んでいる。
2014年度は24人の「未踏クリエータ」が選ばれ、その中でも新規性や開発能力、将来性が高く、特に優れた成果を上げた7人が「未踏スーパークリエータ」に選ばれた。同事業の統括プロジェクトマネジャーを務める夏野剛氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授)は「彼らは世界に存在していない、まさに“未踏”のサービスやアプリケーションを開発している。シリコンバレーであれば、もう10億円単位のお金が付いているだろう」と太鼓判を押す。
2015年6月、24人の未踏クリエータが一堂に会する「修了式 兼 スーパークリエータ認定証授与式」が行われた。そこで紹介された、7人のスーパークリエイターが生み出した“未踏”のサービスやデバイスを紹介しよう。
髪の毛で音を“感じる”、聴覚障がい者向けデバイス――「ONTENNA」
「このデバイスを使うことで健常者とろう者のギャップが少しでもなくなればいい」
そう語るのは、キヤノン 総合デザインセンターヒューマンインターフェースデザイン部に務める本多達也氏。彼は振動と光で音知覚をサポートする聴覚障がい者向けデバイス「ONTENNA」を開発した。30〜90デシベルの音圧を、リアルタイムで256段階の振動と光の強さに変換して、音のリズムやパターン、大きさを利用者に伝える。
大学生のときにろう者支援のNPO法人で活動していた本多氏は、「まるで、ねこのヒゲが空気の流れを感じるように、髪の毛で音を感じることのできる装置」というコンセプトでONTENNAを開発した。肌に付けると振動する感触が気持ち悪い、服だと気が付かないといった課題があり、いろいろと試した結果、ちょうどいい張力がかかる髪の毛に決めたそうだ。
音の強弱やタイミングを知覚できるため、動物の鳴き声のパターンや、車の通過時の音の変化を認識できる。実験を通じて、インターホンや電話の着信に気付かせるなど、ろう者の日常生活を支える効果があることも実証されているという。
一般的に聴覚を補う方法としては視覚を使うことが多いが、ONTENNAでは触覚を使うという新しさが評価された。また、本多氏は耳たぶに装着する「ONTENNA earing」も開発。工事現場などの大音量が響く場所では、ひっきりなしにONTENNAが振動し続けてしまうといった問題に対応しつつ、製品化の可能性を探るという。
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