プロマネに“向かない人”っているの?:【新連載】プロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)
現代のプロマネは、昔よりも難しくなっているといわれています。多様な人材や混沌とした状況に苦しみ、「自分はプロマネに向かない」と自信を失う人もいるかもしれません。では、そもそもプロマネが発揮すべき資質やリーダーシップとは何なのでしょうか。
プロマネに求められる2つの資質
PM理論では、リーダーシップは次の2つの機能に分けられます。
- P(Performance)機能:チームの目標達成を遂行する機能(目標の共有、計画作成、実績管理、アサイン調整、時間管理など)
- M(Maintenance)機能:チームの人間関係を維持する機能(部下への配慮ある声かけ、相談に乗るといったケアなど)
それぞれの機能を軸にとり、発揮している(大文字)と発揮していない(小文字)で分類すると、以下のようになります。自身にどのような行動のクセや特性があるかを振り返り、傾向を把握することから始めてみましょう。
「PM理論」による4分類
PM:理想的な状態。目標もメンバー間の関係性も両方高い状態で実現できる
Pm:目標達成には導けるが、メンバー間の関係性に不具合が生じるため、長期的にはメンバーが疲弊してしまう。プロジェクトが解散したあと、「このプロマネのチームは二度と来たくない」と思われる可能性がある
pM:とてもイイ人だが仕事はイマイチなので、チームとしての評価もイマイチになりかねない。きちんと仕事をしたい部下からの信頼が低くなる傾向がある
pm:プロマネとしては要改善
当然のことながら、PM両方バランスよく発揮できるプロマネが望ましく、そのチームは高いパフォーマンスが発揮できるといわれています。自分の傾向を知った後は、意識的に足りない機能に取り組んで、伸ばすようにするとよいでしょう。また、現在発揮できている機能でも、より効果的に実践できる可能性もあるため、情報収集や実践を繰り返すとよいです。
今、求められるプロマネの“影響力”
とはいえ、全ての機能を自分一人でカバーすることもありません。自分に足りない機能を持った部下がいれば、協力を求めるのもアリです。自分にM機能が足りないと自覚したのであれば、「プロジェクトの進行は得意だが、困ったメンバーの相談に乗るのは苦手なんだ。そのあたりをフォローしてほしい」などと部下に依頼します。
既に何となくフォローしてもらっている部下がいるならば、そのことに感謝を伝えてみるのもよいでしょう。感謝の言葉がM機能を発揮して、相手のモチベーションに影響を与えるかもしれません。プロジェクト運営の全てをプロマネ1人で背負う必要はないのです。部下や周囲の力を上手に活用してチームを目標達成へと導く、それが今求められるプロマネの資質――「影響力」なのです。これは決して天性の資質などではなく、誰でも知識とトレーニングで身につけることができます。
この連載は、プロマネになりたての人や、役職に就いたはいいものの“やることが山積みで、関係者のはざまで日々翻弄されている”人が、自分の限られた権限やリソースの中で“ヒューマンスキル”“ビジネススキル”を使ってチームをよりよい状態へ導くことをテーマに、さまざまなスキルやその活用法をお届けします。
どのスキルをどう使えば、うまくチームを運営できるか。今日も踏ん張っているプロマネの皆さんに、少しでもお役に立てれば幸いです。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
- ブログ:「岩淺こまきの『明日の私を強くするビジネス元気ワード』」
- “上司部下のコミュニケーション”に効く前連載「そのひとことを言う前に」はここからどうぞ。
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