Linux専用メインフレームに注力するIBMの思惑:Weekly Memo(1/2 ページ)
IBMがLinux専用メインフレームの新製品「IBM LinuxONE」を投入した。かつてはLinuxのようなオープン環境と対極にあったメインフレームの変貌ぶりを象徴する動きだ。果たしてIBMの思惑とは――。
オープンソースとメインフレームの「いいとこ取り」
「Linuxをはじめとしたオープンソースソフトウェア(OSS)は今や幅広い用途で利用されるようになったが、企業の基幹業務ではまだまだ実績が少ない。今回の新製品でその制約を取り払いたい」
日本IBMの朝海孝 理事IBMシステムズ・ハードウェア事業本部ハイエンド・システム事業部長は、同社が8月24日に開いたLinux専用メインフレームの新製品発表会でこう語った。
新製品の名称は「IBM LinuxONE」。最大8000台の仮想サーバを稼働できる大規模システム向けの「Emperor」と、最大600台の仮想サーバを稼働できる中規模システム向けの「Rockhopper」の2モデルからなる。
まず、注目されるのはLinuxONEという製品名だ。IBMのメインフレームはこれまで「z Systems」を総称としてきたが、今回の新製品はLinuxを前面に押し出した名称で、新たな製品ラインとして打ち出している。
2つのモデル名についても、Emperorは「皇帝ペンギン」、Rockhopperは「岩飛びペンギン」と、Linuxのトレードマークであるペンギンになぞらえた形で親しみやすさを狙っている。
また、ハードウェアにもLinux色が施されている。ハードウェア自体は2モデルとも既存のz Systemsの同規模システム向け製品と同等のものだが、写真の通り、Linuxのトレードカラーである黄色が目立つように使われている。
まさに見た目からして「Linux専用」を強く打ち出している今回の新製品だが、中身も同様にLinuxを生かす仕組みがさまざまな形で施されている。朝海氏によると、製品コンセプトは「オープンソースとメインフレームのいいとこ取り」。つまり、オープンソースのメリットとメインフレームによるエンタープライズコンピューティング技術を融合させることによって、OSSを基幹業務で利活用できるようにしていこうというわけだ。
同氏はさらに、それを押し進めていくうえで、LinuxONEは「Linux Your Way」「Linux without Limits」「Linux without Risk」といった3つのユーザーメリットを提供することができると説明した。
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