ネットスラングで学ぶ? プロマネ流コミュニケーション管理術:女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(3/3 ページ)
2人なら1つ、3人なら3つ、4人なら6つ、9人なら36あるものってなーんだ? 答えはコミュニケーションチャネルの数。ということは、9人のプロジェクトを回すとき、プロマネはこんなに多くのコミュニケーションを意識しなきゃならないの!?
面倒くさそうに従弟が教えてくれたところによると、「無理ゲー」というのは、攻略するための難易度が高かったり、ゲームの状況的な理由で攻略条件が高くなってしまっていたり、システム的に攻略が難しかったりする場合に利用するゲーム内での言葉らしい。まあ、攻略が難しいとか無理っぽいゲーム、という意味で「無理ゲー」となったのね。
そういえばファミコン時代には、全く面白くないゲームのことを「クソゲー」って言ってたなぁ。今考えたら何て品のない言葉かしら。どうやら従弟のフレンドさんは、この「ゲー」という部分を、侮辱されたと解読してしまい、怒り出したようなのだ。
また、それ以外にも「mjk」と入れたら「まじか」と読み、「乙」は「おつかれさま」の略で、「ノシ」というのは、手を振っている絵文字で「バイバイ」とか「さようなら」という意味――というのがあるらしい。「ノ」が手で、「シ」がその手を振っている動作を表しているんだって。知らなかったら絶対に「のし」って読むよなぁ。
なるほどねぇ。いわゆるネットスラングってやつね。ネットスラングを知らない人が、普段よく使っている人とコミュニケーションするのは大変だ。こういう「スラングを知っているか知らないか」というのもノイズになるわよね。
ネットスラングも一応日本語(?)なんだけど、むしろ専門用語に近い。もし、うちの会社でこういったネットスラングを使ったら、果たして何人に通用するのかしら? あ、その前に社会人として使っちゃダメじゃん。ダメなんだけど、本人がそれをネットスラングって知らなかったら使うかもしれないわね。
ああ、もしかして、コミュニケーション計画で使う専門用語の指定と使っちゃいけない用語っていうもの設定しておくものかもしれない。だってPMBOKって「使うもの」と「使わないもの」とか、「含まれるもの」と「含まれないもの」とかを意識させるプロセスが多いものね。
さてさて、従弟のチャットを見ている場合じゃない。先へ進まなくっちゃ。ゲームの画面から参考書へと視線を戻す。えーと、何してたんだっけ……。
一度、集中力が切れると、その前の状況に戻すのにちょっと力が必要だ。そうだ、「コミュニケーション・モデル」と「コミュニケーション・チャネル」の項目のところを学習してたんだった。
わたし コミュニケーション・チャネル! これも勉強したなぁ。コミュニケーション・スキルの研修で出てきてたんだけど、PMBOKにも出てくるってことはそれだけ大事ってこと? なんか、大事だってこと自体があんまりぴんと来ないんだけどなぁ。
ちょっと不謹慎な(?)なことを思いつつ、参考書を読み進める。参考書には「プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトにおけるコミュニケーションの複雑さを指標として、予想されるコミュニケーション・チャネルや経路の数を考慮すべきである」とあった。
わたし コミュニケーションの複雑さ?
普段の私は、ヘルプコールをかけてくる相手と私との間でコミュニケーションをとる。参加者は相手と私の2人だ。コミュニケーション・チャネルは計算しなくても1つしかない。これはシンプルだ。
ちょっと人数を増やして考えてみようかな。例えば、そこにシステム部の人が1人絡むと、合計3人だから、コミュニケーション・チャネルは3本になる。参加者2人の時はチャネルが1なのに、1人増えて3人になっただけでチャネルは2つも増えるのか。4人の時はどうかな? コミュニケーション・チャネルの本数は、n(n−1)/2という計算式で求められる。これによると、4(4−1)/2 = 4×3÷2 = 6となる。2人の時に比べて6倍だ。
うちの部署は、人数が9人だから、その場合のコミュニケーション・チャネルは、ええと……9(9-1)/2 = 9×8÷2 = 72/2 = 36……え? 36??
メンバーが9人いる時のチャネルは36もあるの?! 36ものチャネルなんて、複雑すぎっ。と、びっくりしつつ参考書を見ると、参考書には10人の時の例が載っていた。メンバーが10人だとコミュニケーション・チャネルの数は45。メンバーが1人増えただけで、36から45までチャネル数が増える。人が増えるって怖いのねぇ……。
ん? あれ?? プロジェクトが遅延した時に人を増やすことがあるけれど、あれって、効率上がっているのかしら? 人が増えればチャネル数が増えるし、コミュニケーションの総量も増える。そのチャネル1つ1つに、ノイズがあるわけで……。チャネル数が増えれば、コミュニケーション・ミスが生じる条件が増えるってこと? で、そのことをプロジェクト・メンバーのみんながそれを理解しているとも思えない。
わたし うわっ、こわっ……
とはいえ、プロジェクトを決められた日までに行うには、時としてマンパワーが必要になることもあるし、プロジェクトのプロセスが進めば、プロジェクト・メンバーの人数の増減があるのは当たり前だ。
だとしたら、プロジェクト・マネジャーは、人の増減に注意を払い、コミュニケーション・ミスが発生しないように慎重にコミュニケーションをしなければならないってことよね。だから、コミュニケーション計画のプロセスは大切になってくるし、しっかりとした計画を立てなければならないってことか。確かに、前回学習したプロジェクト人的資源マネジメントとは内容が違う。
と、そこへ叔母が、「パーティーの支度ができたわよぉ〜」と大きな声で叫んだ。今、この家にいる全員に対してメッセージを一斉配信(いわゆるブロードキャスト)したわけだ。そして、その声を耳にして何人かが腰を上げた。
1回では集まりが悪いということを、叔母は経験によって知っているのだろう。再び大きな声で集まるように叫んだ。そして、3度目の声で全員が、パーティー会場(といってもダイニングとキッチンのスペースを仕切りの扉をとっただけなんだけど)に集まった。
10人以上のメンバーを、たった3声で統括する関西オバさまパワーって、すごいわっ! 見習えるかしら?!
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