ネットスラングで学ぶ? プロマネ流コミュニケーション管理術:女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(2/3 ページ)
2人なら1つ、3人なら3つ、4人なら6つ、9人なら36あるものってなーんだ? 答えはコミュニケーションチャネルの数。ということは、9人のプロジェクトを回すとき、プロマネはこんなに多くのコミュニケーションを意識しなきゃならないの!?
「二者間でコミュニケーションをとる」というのは、短期的にはどちらかが情報の送信者、どちらかが受信者となる。実際には相互に情報のやりとりをするので、情報の送信者と情報の受信者は、コミュニケーションをとっている間にコロコロ入れ替わることになる。けれどそれではややこしいので、ある短い時間にぐーっとフォーカスして、「一方が情報の送信者、もう一方が受信者」と固定して考える。
情報の送信者は、「伝えたい情報」が自分の頭の中にある。それをテレパシーで直接相手の頭の中に送り込むことは、ほとんどの人間にとっては不可能だ。だから、話し言葉や書き言葉、身振り手振りなどに置き換えて相手に伝えることになる。この、話しことばや書き言葉、身振り手振りなどのことを「メッセージ」といい、頭の中にある情報をメッセージに変換することを「コード化」という。
メッセージは、話しことばであれば対話や電話、書き言葉であれば報告書やメール、チャットなどの手段を使って受信者に送り届けられることになる。これらの手段のことをコミュニケーション・チャネルという。
情報の受信者はそのメッセージを受け取ると、「ああ、相手はこういうことが言いたいんだな」とそのメッセージを解読して頭の中に入れ込む。その後、情報の受信者は送信者に対して、「確かにあなたからの情報を受け取りました」という受信確認や、「あなたからの情報について質問や意見があります」というフィードバックなどを行うことになるのだが、この場合も「コード化→送信→解読」というステップを踏んで送り届けられることになる。
問題は、この「コード化→送信→解読」のステップの中に、そのプロセスを妨げるさまざまな障壁が少なからず存在する、ということだ。
例えばコード化する際、自分が持っている情報を適切に表現する言葉を思いつかないかもしれない。コミュニケーション・チャネルの問題で、情報が相手にタイムリーに届かないかもしれない。直接会って話したらうまく通じるのに、文字にしてしまったために微妙なニュアンスが伝わらなくなってしまうかもしれない。受信者が解読するとき、誤解してしまうかもしれない。送信者と受信者との立場の違いや文化の違い、生活習慣の違いなどで、情報が正しく伝わらないかもしれない――。
そのようなありとあらゆるメッセージ伝達を妨げるものをノイズという。重要なのは、ノイズは必ず存在し、完全に正確なコミュニケーションはあり得ない、ということだ。コミュニケーションにとって大切なことは、ノイズの存在を認識して、いかにこのノイズを回避し、コミュニケーション・ミスを最低限にするか、ということだ。
……覚えてるじゃん。私、偉いっ(誰も言ってくれないから自分で言っておこうっと)。
勉強が苦手な私がこういうことをしっかり覚えているのは、やはり仕事でコミュニケーションの難しさ、大切さをイヤというほど思い知らされているからだろう。事実、コミュニケーションのミスをいかに減らすか、という努力は、普段からそれなりにやっているつもりだ。いろいろ思いを巡らせているうちに、私の脳みそは、ミュニケーション・モデルにある「ノイズ」についてのある出来事を思い出していた。
それは、友人のA美(注:A子ではない。もちろんAさんでもない)が印刷のことをコピーと叫んで私を悩ませた事件だ。しかもこの時の原因は紙詰まり。これもノイズの1つよね。用語の問題って大きいと思う。特にIT世界の専門用語って難しくて、ヘルプデスク業務でもこれに散々振り回されている。と、その他のいろんな事件を思い出していると、突如、目の前にいた従弟が「あーーーー、そうかぁ。知らんのかぁ」と叫んだ。
わたし どうしたの?
従弟 いや、このゲームの中のフレンドさんなんだけどさ、
わたし フレンドさん?(フレンド に さん つけるのか? 変じゃないか?)
従弟 ゲームの中だけの友達のこと。で、そのフレンドさんが、俺が使ったチャットの言葉に反応して機嫌悪くなっちゃってさぁ。
わたし どういうこと?
従弟 ゲームにチャット機能が付いているからさ、それで話しているんだけど。こいつ、なんか言葉の意味を間違えたのか、この言葉を知らなかったのか、すっごいけんまくになっちゃってさ。今、意味を教えていたところなんだ。
わたし どんな言葉??
従弟 「無理ゲー」って言葉
わたし む、ムリゲー? 何それ?
従弟 えーーーーーーー。おねぇちゃんも知らんのぉ?
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