GEにみるIoTとビッグデータ連携でのOSS利用と国際協調:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/3 ページ)
モノのインターネット(IoT)の普及拡大とともに、企業の産業システムがオープンソースソフトウェアとデータを連携する場面が増えてくる。ビッグデータ/IoT連携を推進するグローバル企業は、どのように対応しているのだろうか。
IoTとビッグデータの連携を支えるオープンソースの品質管理
GEのPredix CloudではオープンソースのCloud Foundryを基盤にしているが、ミドルウェアやアプリケーションの層でも、NoSQLやHadoopに代表されるオープンソースを利用したビッグデータ分析ツールの導入が進められている。これまでクローズドな環境において、独自開発による個別最適化を追求してきた制御システムの開発・運用者にとって、オープンソースソフトウェアの品質管理やセキュリティ対策は、あまりなじみのない課題ではなかろうか。
例えば、NoSQLはリアルタイム高速処理を得意とする反面、HTTPベースの認証機能や通信プロトコルへの依存度が高く、クロスサイトスクリプティングやインジェクション攻撃などを招きやすい。アプリケーション開発プロセスの標準化・セキュア化を推進するためには、キーバリュー型、ドキュメント指向型、カラム指向型、グラフ型など、NoSQLデータベースの各データモデルに対応しつつ、外部の開発者コミュニティと密接に連携しながら、最新情報を共有する必要がある。
また、セキュリティ機能が標準装備されていなかったNoSQLの弱みをカバーするために、サードパーティーのソリューション(認証、承認、アクセス制御、暗号化/復号など)と組み合わせた運用管理を行いながら、システムのバージョンアップや新機能導入に対応する必要も出てくる。
GEの場合、産業システムを支えるビッグデータ分析の新規事業開発向けに、オープンなプラットフォーム上で社外のナレッジを活用してきた実績がある。そこで培ったノウハウを生かしながら、オープンソースソフトウェアを利用して商用パッケージやサポートサービスを開発・提供するベンダー(例えばPivotalやCouchbase)とのエコシステムを構築できるのは、大きな強みになっている。
IoTとビッグデータの連携をにらんだ包括的な国際標準化への取組
産業機器向けIoTの国際標準化への取り組みに関して、GEは2014年3月、AT&T、Cisco Systems、Intel、IBMと共に「インダストリアルインターネットコンソーシアム」(IIC)」の創設に参加(関連情報)し、2015年6月に公表された「インダストリアルインターネット・リファレンス・アーキテクチャ」(IIRA)の策定作業などに貢献している(関連情報)。
加えてGEは、ビッグデータの国際標準化への取り組みについても、本連載の第21回記事で取り上げた米国立標準研究所(NIST)のビッグデータパブリックワーキンググループ(BD-PWG)による「ビッグデータ相互運用性フレームワーク・バージョン1.0」(2015年4月草案公表)の策定に参画している。ビッグデータのセキュリティ/プライバシーを取りまとめた「M0395: Draft SP 15004 Volume 4: Security and Privacy」の章では、クラウドセキュリティアライアンス(CSA)のビッグデータワーキンググループ(BDWG)のメンバーなどと共に執筆作業を行っている。
産業機器分野では個々のユーザー企業やベンダーが、独自開発で培ってきたテクノロジーをベースに技術標準化を図り、要素技術を積み上げながら上位レイヤレベルの標準化へと進む流れが主流だ。日本のIoT標準化も、プロダクトオリエンテッドな要素技術を起点にしたボトムアップ型のアプローチで進んでいる。
これに対して、IICのIIRAやNISTのビッグデータフレームワークの策定作業をみると、最初に包括的なフレームワークづくりで合意形成を図り、要素間のインタフェースのルールづくりを経て、具体的な要素技術の構築・検証に落とし込むという流れが基本になっている。GEを始めとする欧米企業は、IoT全体の相互接続性や相互運用性を確保しながら、各社の強みとする要素技術領域に落とし込み、ビッグデータをベースとする付加価値サービスを創出して、ビジネスの拡大・競争力強化を図ろうとする動きが顕著だ。
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