「金融×IT」は融合かバトルか?──FinTechの行方:Weekly Memo(2/2 ページ)
ITを活用した新たな金融サービス「FinTech(フィンテック)」が注目を集めている。金融とITの「融合」と言われるが、「バトル」の側面もある。果たして今後の行方は。
大手ITベンダーがエコシステムづくりに注力
では、大手ITベンダーはFinTechに対してどのような取り組みを行っているのか。日本ではここ最近、富士通、日本IBM、NTTデータが相次いで新たな取り組みを打ち出した。3社ともに共通するのは、金融機関とFinTech企業を結びつける場を提供するとともに、新たなサービス開発に向けて自社の技術やノウハウを生かしてもらえるようなエコシステムを形成しようという思惑だ。
3社のうち、最も大掛かりに見えるのは富士通だ。同社はこの9月から、国内金融機関とFinTech企業などを合わせて100社以上が参加したFinTech推進コンソーシアム「Financial Innovation For Japan」(以下、FIFJ)の本格的な活動を開始した。同社が主催する形でFinTech企業によるプレゼンテーションやコンテスト、ハッカソンなどの各種イベントを行い、金融機関とFinTech企業の交流機会を提供するといったエコシステムである(図参照)。
金融機関では、三菱東京UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、野村ホールディングス、日本生命保険、ジェーシービーなどが参加。FinTech企業としては、独自技術を持つベンチャー企業が名を連ねるとともに、日本マイクロソフト、ヴイエムウェア、SCSK、TISなどのITベンダーも参加している。
富士通は金融機関向けに、FinTech企業が提案する金融サービスの市場調査や技術評価、および新たな金融サービスを提供するためのシステム構築支援も行う。さらにシステム構築支援では、新たなサービスを提供するためのシステムと、既存の業務システムとの連携を支援する機能と同社のナレッジを統合した「デジタルビジネス・プラットフォーム」を提供するとしている。このデジタルビジネス・プラットフォームについては、近く開かれる記者会見で詳細な説明が行われる見通しだ。
日本IBMが10月から提供を始める「IBM FinTechプログラム」は、金融機関を対象に「FinTechに関する知識を深めるステージ」「アイデアを具現化してシステムの実証実験を行うステージ」「金融機関の既存システムに接続してサービスを本格的に導入するステージ」という3段階に渡り、ワークショップやハッカソンのサポート、導入・運用サービスなど提供するとしている。
NTTデータも「一般企業によるベンチャー企業との新規ビジネス創発の取り組みを支援するサービス」と銘打った「デジタルコーポレートアクセラレートプログラム(略称:DCAP)」を7月から提供しており、最初のユーザーとして、みずほ銀行が採用している。
このように、富士通、日本IBM、NTTデータといった大手ITベンダーが新たな取り組みを打ち出したことで、FinTechはIT業界にとってもますます激戦区になっていくだろう。果たして、FinTechによって金融とITの両分野がどのように変化していくのか。そして、今後どんな企業がFinTechの“主役”になっていくのか。大いに注目しておきたい。
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