企業にいるからこそ、世界を変える研究ができる――安部麻里さん:「リサーチャー」という仕事(2/2 ページ)
日進月歩で技術革新が続くエンタープライズITの世界。その裏にリサーチャーと呼ばれる“研究者”の活躍があるのはご存じだろうか。企業に籍を置きながら、研究を続ける彼らはどのようなことを考えて働いているのか。知られざる仕事内容とこだわりに迫った。
「折り紙は数学、料理は化学」――3人の子どもを持つ“ママさん研究員”
研究員として第一線に立つ安部さんだが、家には3人の子どもが待つ“ママさん研究員”という顔もある。趣味は子どもの影響で始めた「折り紙」とのことだが、今では「子どもそっちのけでハマっている」そうだ。
「出来上がったものを見て、子どもが喜んでくれるのがモチベーションになっていますが、個人的には作っている最中が一番楽しいですね。紙を折るだけで自在に形を作るのは数学的なアプローチでもあります。折り紙は“数学”なんです」(安部さん)
料理の楽しみ方も“研究者的”だ。チョコレートのテンパリング(溶かしたチョコレートを再び固める作業)に必要な温度を追求するなど、「料理は化学なんです」と安部さんは目を輝かせる。「やるならとことん」が安部さんの信条。こんなところにも、研究員としてのこだわりがうかがえる。
「企業のリサーチャー」という魅力
研究と仕事の両立や、子育てと仕事の両立など、仕事をする上で苦労することも多い安部さん。彼女がそれでも「企業のリサーチャー」を続けているのは、「世の中を変える可能性」に魅力を感じているからだという。
「研究者として世の中とのコネクションがあるのは大きな魅力です。どんなに優れた研究でもマーケットに出なければ意味がありません。父親が半導体の研究者で“世の中の役に立つこと”に重きをおいている、そういうところは似ましたね」
研究者というと、企業に入らず大学などで研究を続ける道もある。安部さんはそういった学術の道に進んだ友人と話す機会もあるそうだ。
「彼らは興味の赴くままに研究を行い、その研究成果の生かし方を考えてほしい、というスタンスが多い気がします。世の中を変えるという目的に対して、アプローチが違うイメージですね。私は今のポジションが合っていると思ってますし、もう一度学生からやり直せるとしても、企業のリサーチャーを選ぶでしょうね」(安部さん)
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