データ暗号化から考えるイノベーションとセキュリティの両立:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/3 ページ)
世界各国でビッグデータ利活用によるイノベーションが本格化する一方、サイバー攻撃による大規模情報漏えい事案が後を絶たない。利便性と安全性を両立させる対策として注目されるデータ暗号化の動向を探る。
セキュリティがFintechやHealthtechのイノベーション基盤に
前回の記事でモノのインターネット(IoT)における米General Electric(GE)のイノベーションを推進するオープンソースソフトウェア(OSS)の導入事例を取り上げた。
欧米の中小企業市場では以前からのソーシャルメディア関連企業に加え、金融テクノロジー(Fintech)やヘルスケアテクノロジー(Healthtech)など、厳格な法規制を敷いてきた業種・領域のスタートアップ企業が、Hadoopによる分散処理基盤やNoSQLによるリアルタイム分析など、OSSベースのビッグデータ技術を利用したイノベーションの創出・事業化に取り組んでいる。
遺伝子解析による個別化医療支援、ウェアラブル健康機器を利用したデータヘルスビジネスなど、Healthtechベンチャーが急増する米国のシリコンバレーでも電子マネー、モバイル決済、国際送金サービスなどに、Fintechの成長が著しい英国ロンドンでもR、Python、Hadoop、Spark、NoSQLといったオープン志向の技術がスタートアップ企業のビッグデータシステムを支えている。
金融や医療のスタートアップ企業が機微なビッグデータを取り扱う際、法規制へ対応するための組織づくりや情報セキュリティ投資が大きな壁となる。だが欧米の場合、早期からベンチャーキャピタル(VC)やアクセレレーター、地域クラスターなどが支援する仕組みづくりも盛んだ。
加えて、法規制の監視を担う行政当局自身がイノベーション推進機関となって支援するケースも増えている。例えば、ビッグデータを経済成長・雇用創出のエンジンと位置付けるEU諸国は、「EU個人データ保護規則」の制定化に向けて取り組むと同時に、中小企業向けの規制対応支援にも熱心である。
他方で米国政府も、セキュリティ/プライバシーを、FintechやHealthtechに代表されるイノベーションを推進する基盤として捉え、標準化やガイドライン策定などの仕組みづくりを行っており、連邦取引委員会(FTC)ではスタートアップ企業向けに、「Start With Security」というセキュリティガイドラインを公表している(関連情報)。
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