図書館のデジタル化、“アナログなIT”が後押し 町田図書館の挑戦(2/2 ページ)
貸し出し行列の解消、蔵書の管理の効率化――。人手不足の町田図書館が抱える課題を解決したのは、“ちょっとアナログ風な”IT技術だった。
ICタグとカメレオンコードのハイブリッドでコスト削減
カメレオンコードは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色を使ったカラーバーコード。バーコードの発行はプリンタで行え、認識用のリーダーにスマートフォンやWebカメラを使える。安価に導入できることから、ICタグのコスト面のデメリットを補うことができた。
蔵書確認のチェックにも手間が掛からなくなった。本の背に張られたカメレオンコードにカメラをかざすと、認識したコードの周囲に色枠が表示され、認識漏れがないかを確認しながら作業ができるようになったからだ。
セルフ予約棚についても、書籍のありかを安価なWebカメラを使って確認できるため、導入コストの大幅削減につながったという。
ICタグとカメレオンコードの導入で実現したセルフ予約棚とセルフ貸出機は、利用者から「操作が思ったより簡単」「一度に複数の書籍の貸し出し処理ができて便利」「自分の予約資料を探すのが楽しい」といった声が挙がっている。しかし、「これまでは職員がやってくれていたのに、自分でやらなければならなくなり面倒になった」という戸惑いの声も少なからずあるという。
「あるはずの本が棚にない状態」をなくす
ICタグとカメレオンコードのハイブリッド活用で運用の効率化に成功した町田図書館は、新たなサービスの検討も始めている。
1つは、これまで1年ごとに行っていた蔵書点検の日常化だ。毎日、一定数の書架の本についてカメレオンコードを読み込み、リスト化することで、異なる分類の書籍が書架にまぎれこんでいるのを発見できるようになる。気づいた時にすぐ、正しい棚に戻すようにすれば、「あるはずの本が棚にない」という問題を減らすことが可能だ。
もう1つは、利用者に対する書籍情報の配信だ。例えばカメレオンコードを読み取れるアプリを利用者に配信すれば、書名や著者名、出版社、発行年、分類などの情報を提供できるようになる。そこから町田図書館が所有する同じ著者の本や、他の図書館にある本も探せるようになれば、利用者の利便性が向上すると吉岡氏は話す。
今や図書館は、本を借りて読むだけの場所ではなく、本を通じてその土地の文化を発信したり、コミュニティーづくりを支援したりと、さまざまな役割を担うようになっている。
こうした時代の変化に対応するためには、スタッフが書籍の管理に追われる時間を減らし、さまざまな企画を考えられる時間を増やすことが重要になってくる。ITは、そんな図書館を支える心強いパートナーといえるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
iPadが「能」を救う? ファン拡大を狙う新たな実験
日本の伝統芸能「能楽」。世界的にも評価が高まっているが、予習なしでは内容が理解できないため、とっつきづらいのが現状だ。そんな状況を打開する方法として、今注目が集まっているのがタブレット。これは能楽文化を広める切り札になるのだろうか。
コニカミノルタに“億単位の商談”をもたらした名刺活用術
社内の“眠れるお宝”を掘り起こして売上アップにつなげる――。そんな取り組みを成功させたのがコニカミノルタ ビジネスソリューションズだ。名刺のデジタル化と共有を徹底し、人脈を可視化することで“攻めの営業”に転じ、億単位の商談を掘り起こした。
手のひらサイズの“ITお守り”で山の遭難を防ぐ 長野県のチャレンジ
首から提げた“手のひらサイズのお守り”が登山客を遭難から救う――。空前の登山ブームに沸く長野県が、iBeaconを使った遭難防止の実証実験を実施した。雪崩に巻き込まれた人の救助にも役立つという。
品薄続く「獺祭」、増産のカギは“クラウド”?
知名度の向上とともに品薄状態が続いている、山口の銘酒「獺祭」。品薄の理由は原料である酒造好適米「山田錦」が不足しているためだ。しかし今、国の政策やITの力によって、獺祭の生産量が大きく増えようとしている。
“かつら”業界にも3D化の波――アデランスが全店舗にワークステーションを導入した理由
産業向けでも個人向けでも、3Dデータをやり取りする場面は徐々に増えてきているが、“かつら”業界にも3D化の波が来ている。頭の型を3Dデータ化する新システムを導入したアデランスは、3Dデータをスムーズに扱えるワークステーションを探していたという。



