クラウドの主流は「パブリック」か「ハイブリッド」か:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業のクラウド利用形態は今後、「パブリック」と「ハイブリッド」のどちらが主流になっていくのか。日本ヒューレット・パッカード社長の話を聞いて考えさせられた。
「ハイブリッドクラウドは通過点の1つ」との声も
「実は、こうしたハイブリットクラウドを推進する考え方は、これまで10年間にわたるHP自身のIT変革への取り組みから導き出したものだ」
吉田氏はこう語り、その取り組みについて図を示しながら次のように説明した。
「HPは2005年頃から、グローバルで85カ所保持していたデータセンターを6カ所に集約することに取り組んだ。これに伴い、当初4000本に及んでいたアプリケーションも1600本に削減した。そして2009年頃からは、6カ所のデータセンターをできる限り自動化することに取り組んだ。そのうえで2011年頃から本格的なクラウド化に乗り出し、すべてのクラウド形態に取り組んできた」
「その経験から導き出したのが、クラウドにおいても自社のデータを自らの手で管理できるようにしておくことの重要性だ。それは、パブリッククラウドだけに頼ると担保できないことも自ら経験して分かった」
そして、同氏はこう強調した。
「クラウド化するメリットを追求するのは当然だが、企業にとってクラウド化することは方法論であって目的ではない。目的はあくまでも企業の経営やビジネス戦略を遂行することにある。そのために最善のIT環境はどうあるべきか。また重大なリスクをいかに最小限にとどめるか。HPはハイブリッドクラウドがその答えだと考えている。したがって、パブリッククラウドは有力なサービスを提供しているベンダーとパートナーシップを組んで連携し、HPはハイブリッドクラウドの構築・運用に注力することにした」
このコメントに続けて、同氏が決め台詞のごとく語ったのが冒頭の発言である。HPEは今後、パブリッククラウドについてはAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftなどのサービスと連携していくとしているが、興味深いのはパブリッククラウドサービスを強力に推し進めるベンダーと、見解が真っ向から異なることだ。
例えば、AWSの幹部はかつて筆者の取材に対し、「ハイブリッドクラウドは通過点の1つにすぎない。今後は必ずパブリッククラウドが主流になっていく」と語っていた。まさしく「ハイブリッド」と「パブリック」の言葉が入れ替わっただけの吉田氏の発言に、立場の違いをつくづく感じた。これは、AWSのようなネットサービスを主体としたベンダーと、HPEのようなエンタープライズITベンダーの立場を象徴した見解の相違でもある。
果たして、ユーザー企業はこの両者の見解をどう受け止め、自社にとって最善のクラウド利用形態を選択すればよいのか。ユーザー企業にとって、クラウドがもたらすイノベーションとは何なのか。あらためてクラウドの本質を考えさせられる日本ヒューレット・パッカードの会見だった。
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