第5回 ファイルがなくなる? データの配置や保存の仕組みがどうなるか:クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(2/2 ページ)
これまではクラウド社会で大きく変わりつつあるデジタルデータの扱い方、その注意点について話してきました。今回からはIT側から見た理想的なデータ保存形式について解説していきます。
ファイルストレージとオブジェクトストレージの違い
上記のような3つの要求を満たすストレージとして、パブリッククラウドや研究機関で使用されているのがオブジェクトストレージです。既に実績がありますので、全部のストレージシステムをオブジェクト型にすればよいのではないかと思いがちですが、そう考えるのは早計です。
オブジェクトストレージは、これからのWebスケール時代に求められ、今までのファイルストレージが対応できていない機能を持っていますが、現段階で全てのファイルストレージを置き換えるのは容易ではありません。以下にオブジェクトストレージとファイルストレージそれぞれの得意・不得意分野をまとめてみます。
上記の特性を鑑みると、現段階でオブジェクトストレージは以下のような分野に適しているといえます。
- コンテンツデポ、コンテンツアーカイブ
- 動画、ゲームなどのWeb配信
- セキュリティログデータなどの半永久的な保存
- 研究機関などで生成されるデータの半永久的な保存
- 簡易データバックアップ
逆に、データへの頻繁かつ複数のアクセスがあり、アクセスのコントロールや一貫性が重要なデータベースなどには、従来のファイルストレージが向いています。
また、上の表にある「データの堅牢性」という項目を補足すると、これはオブジェクトストレージのデータ保存法がいたって簡単であることに関連しています。一見関連性はなさそうですが、通常のオブジェクトストレージは同じデータを異なる場所に分散して配置します。データの3つのコピーを異なる地域(例えば東京、シンガポール、US)に配置するといったことが可能です。仮に2カ所のデータが読めなくなっても、残りの1カ所からデータが読めればよいわけです。
これを5カ所とか、それ以上に増やすことで、簡単にデータの堅牢性を高められるわけですね。最近では「Erasure Coding(EC)」という、以前から使われているエラー訂正符号をオリジナルデータに付加させることによって、単純に大量の数のコピーを作成しなくても、少ない容量で同様の堅牢性を実現する技術もあります。
オブジェクトストレージのこれからは?
従来は大容量データを長期にわたって蓄積する研究機関や、企業のアーカイブデータに使われることが多かったオブジェクトストレージですが、最近ではネットワークの高速化、SSDを含むフラッシュメモリの大容量化と低価格化などによって、より身近なストレージとして使われる機会が増えてきました。
今後はオブジェクトストレージのネックと思われている通信スピードの改善も期待されます。例えば、Ethernetのロードマップでは2020年に200Gbps(理論値)の実現が見込まれていますし、「シリコンフォトニクス」といった技術も出てきています。もちろんデータベースやアプリケーションを従来とは異なるオブジェクトフォーマットに合わせる必要もありますが、今後出てくるクラウドネイティブのアプリケーションが、オブジェクトストレージのより広い範囲の活用を可能にしていくかもしれません。
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