シェアリングエコノミー型が牽引するオープンガバメント:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/3 ページ)
2期8年目を迎えようとする米国オバマ政権が推進してきたオープンガバメント/オープンデータ推進策は、仕上げの段階に入ろうとしている。従来の電子政府戦略からどのように進化したのだろうか。
市民参加型ビッグデータイノベーションへの進化
米国政府は、2011年9月に公表した「第1次オープンガバメント国家行動計画」(関連資料PDF)で、オープンガバメントによる公共サービス改善策として、「Data.gov」をプラットフォームとするオープンイノベーションの促進、官民連携の強化、消費者の意思決定や科学研究を支援するデータの公開などを打ち出した。
2013年12月に公表した「第2次オープンガバメント国家行動計画」(関連資料PDF)では、連邦政府機関が政府のデータを戦略的資産として管理するための改革、オープンデータ利活用を促進するための「Data.gov」のバージョンアップ、農業/栄養関連データのアクセス拡大などが加味された。
そして2015年10月、「第3次オープンガバメント国家行動計画」(関連資料PDF)を公表した。新たな計画では公的サービス改善のためのオープンガバメントを実現すべく、以下のような施策を掲げている。
第3次行動計画では、本連載の第4回で取り上げた米ホワイトハウス主導のオープンガバメント/オープンデータ推進策と、第9回で取り上げた地域住民参加型IT利活用(シビックテクノロジー)による社会課題解決推進策に代表される、トップダウン型とボトムアップ型のアプローチが融合してきた点が注目される。
例えば、本連載の第9回で取り上げた地域住民参加型IT利活用(シビックテクノロジー)による「Open311」市民サービスのオープンプラットフォームが、シカゴ、サンディエゴ、フィラデルフィア、ニューヨークなど、全米各地に拡大し、連邦政府レベルの施策にも取り込まれるようになった。
こうした公共サービスにおけるデータソースに関して、データのオーナーでもある地域住民が積極的に関与しながらシステムの改善を図る、ボトムアップ型のイニシアティブから生まれたIT資産をプラットフォーム化し共有する「シェアリングエコノミー」のモデルは、伝統的な公共ソリューションやパブリックアウトソーシングの発想を覆し、破壊的なインパクトをもたらし始めた。
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