第13回 “根が深い”旧システムからDocker環境への移行をどうするか:古賀政純の「攻めのITのためのDocker塾」(3/4 ページ)
いざ古い物理サーバや仮想化基盤からDocker環境に移行しようとすると、実に“根が深い”さまざまな課題に直面することになるでしょう。Dockerへの移行について知っておくべき必要最低限のポイントを解説します。
旧資産をDocker環境へ移行する方法を考える
先述した方法についてそれぞれ、Dockerへの移行を考えてみましょう。
1番目は、現在の古い物理サーバをそのまま利用する方法ですが、Dockerが稼働できる環境が必要です。古いサーバで、既にメーカー保守、サポート契約が切れている場合や、古いサーバで稼働しているOSをDockerに対応したOSに自己責任でアップグレードインストールする必要があります。
Dockerは、基本的にx86_64アーキテクチャのOSでの稼働を前提に開発されていますので、例えば、32ビットのアーキテクチャのCPUを搭載したサーバでは、安定的にDockerを利用することは極めて困難です。したがって、32ビットCPUを搭載した古いサーバでアプリケーションが稼働している場合は、先述の2番目から4番目の方法で、アプリケーションを移行させる必要があります。
また、古いマシンを使い続ける場合、移行元の古いマシンが64ビットCPUを搭載したサーバであっても、そのサーバで稼働するOSとアプリケーションが密接に結びついているため、それらをDocker環境に移行するには、移行元のサーバで稼働しているOSとアプリケーションをイメージ化し、再びその古いサーバで稼働するDocker環境に戻すといった作業が必要になります。
しかし、この場合も古いサーバでDockerに対応した新しいOSを稼働させる必要があり、ベンダーによるOSのサポートは当然得られませんし、正常に動作する保証もありません。例えば、物理サーバに搭載されているチップセットとLinuxカーネルの機能の組み合わせによっては、Dockerを稼働させるためのホストOSすら起動しない場合もあります。ですから、結局は古いサーバでDocker用の新しいホストOSを正常に稼働させるためのトラブルシューティングの調査に手間がかかり、難易度が高く、工数も非常にかかる割には、移行のメリットが得られにくい傾向にあります。
2番目と3番目の方法は、新規にサーバを調達し、最新OSの導入後にDocker環境を構築して、ユーザーデータをDockerイメージにインストールする方法が考えられます。OS領域はP2Vツールを使ってKVMのゲストOSイメージに変換後、KVMのゲストOSイメージをDockerイメージに変換します。また、古いサーバ上の外部ストレージの論理ボリュームなどに保管されているユーザーデータの吸い出しは、tarコマンドや、データベース用のバックアップツールなどを利用します。
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