IoTで空港はどう変わる? 6つの実験でJALが気付いたこと:新たな「おもてなし」の姿を探る(2/4 ページ)
大手航空会社のJALがここ最近、ウェアラブルデバイスからIoT、ロボット活用とさまざまな実証実験を続けている。なぜ次々と実験を行っているのか。そして、数々の取り組みを通じてJALが目指す、IoT時代の「おもてなし」の姿とは。
Beacon搭載の車いすやベビーカー、IoT活用で業務効率化
人間の位置を把握することで得られる効果を確認したことから、同社は2015年10月、Beaconの設置範囲を車いすとベビーカーにまで広げた実証実験を実施した。羽田空港にある車いすとベビーカー約200台、スタッフが使うトランシーバー約90台にBeaconを取り付け、それぞれの位置をPCやスマートフォンで一覧できるようにしたのだ。
JALでは、各空港で車椅子とベビーカーの貸し出しサービスを行っている。従来は所定の場所に車いすやベビーカーの在庫がなくなった際、スタッフが探して回っていたという。機材の場所が分かるとどれだけスタッフの業務が変わるのか、これを検証するのが実験の目的だった。
従業員に行ったアンケート調査でも、90%超のスタッフが在庫切れで困った経験があり、80%超のスタッフがトランシーバーでのやりとりに不便さを感じていたという。業務の改善点がはっきりしていたことから「時間の節約になった」「お客さまを待たせることがなくなった」「トランシーバーでもやりとりが減って助かった」など、実証実験への反応はおおむね良かったという。
一方で「車いすやベビーカーが使用中かどうか分かるようにしてほしい」「利用予約ができるといい」「スタッフの位置が分かるのは便利だが、トイレに行くときに恥ずかしさがある」といった改善を求める声もスタッフから上がってきた。こうした実験を行う前には、ユースケースの設定とともに、期待される効果について仮説を立ててはいるものの「実験後のユーザーの感想からは必ずと言っていいほど、新たな発見が出てくる」(小磯さん)そうだ。
ウェアラブル端末の可能性を模索するJALだが、そこから得られるデータはもちろん位置情報だけではない。身体情報を活用した実験も数多く行っている。
関連記事
- IoT名札と人工知能でワークスタイル改革 JALと日立が実証実験へ
名札型ウェアラブルセンサーとビーコンで従業員の労働状況を可視化し、人工知能を活用して分析。従業員の満足度向上につながるワークスタイル変革につなげる――。JALと日立が、こんな実証実験を開始する。 - 機能素材「hitoe」で空港作業員の心拍リアルタイムに観察 JALとNTTコム、東レが安全管理システムの実証実験
着るだけで心拍数などを計測できる機能素材「hitoe」を活用し、屋外で作業する空港作業員の安全管理を行うシステムの実証実験がスタートした。 - Google Glassを航空機の整備に活用 JALとNRIが実証実験
JALとNRIが、Google Glassを活用した業務スタイルの実証実験を開始。航空機の整備士などJALの実務スタッフが装着し、現場作業の効率向上や負担軽減を図る。 - 航空券の“不正予約”を防ぐJALの一手
クレジットカード不正使用の被害が近年増加傾向にある。フィッシングなどで得た個人情報を使った“なりすまし”が増えているためだ。大手航空会社の日本航空も、オンライン航空券予約における不正取引の監視に手を焼いていたという。 - JALの「ターゲティング広告」を成功に導いたビッグデータ分析とは?
Web上で航空券の購入を検討しているユーザーのアクセスログを分析し、サービスの質と利益の向上に成功したJAL。IBMの年次カンファレンス「IBM Insight 2014」でその事例とデータ分析への思いを来場者に伝えていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.