第41回 就活生にも分かる“プリセールス”の知られざる生態:テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(2/2 ページ)
就活中の学生さんからプリセールスの仕事について聞かれて、困ってしまうことがあります。ユーザーや製品と関わる立場ですが、実は1つのようで1つではないプリセールスの中身とはどんなものでしょうか?
プリセールスの組織体制
では、プリセールスの個々の役割について解説していきましょう。
ちょうど私の所属企業には「プリセールス統括本部」という組織があり、ハードウェア製品の販売が主目的のメンバーだけでも150人以上が在籍しています。日本でこれだけの人数を抱えているメーカーは珍しいとのことですが、組織の大小はあっても、どのメーカーもフォーメーションはさほど変わりません。
アカウント担当プリセールス(直販・ハイタッチ)
アカウント担当プリセールスは、名前のとおりエンドユーザーに直接提案・販売を行うプリセールスです。エンドユーザーの業種によって商習慣は大きく異なり、ITシステムの使い道や予算・調達方法も様々ですので、業界ごとに担当を分けて人員配置するのが最も効果的と言われています。この結果、その業界固有の専門用語を交えた会話ができるため話がスムーズですし、コンピュータメーカーという他業種ながら、業務に一歩踏み込んだアドバイスが可能です。
ただし地方については、地場に詳しかったり“呼んだらすぐに飛んで来る”といったフットワークの軽さの方が重要視されるケースも。このような場合は、業種別ではなく地域別に人員配置を行います。
アカウント担当プリセールス(間販・パートナー)
実は、アカウント担当プリセールスには少し違った任務を持つ方もいます。アカウントはアカウントでも、エンドユーザーではなく、自分たちの代わりに製品を提案・販売してくれる“パートナーアカウント”(販売店やSIベンダー)を担当するプリセールスです。間販は「間接販売」の略称になります。
携帯電話の「人口カバー率」のように、日本全国のエンドユーザーが自社製品を購入し、必要なサポートを受けられるようにしておきたいところ。どの業界でもそうですが、これを実現するためにはパートナー戦略(代理店や販売チャネル)がとても重要です。
とは言っても、販売店というのは、実際のところ他メーカーの競合製品も扱っているのも事実。ですので、直販チームがエンドユーザーに採用してもらうのと同様に、パートナーの提案に自社製品を採用してもらうことがゴールになります。
また、パートナーの立場になってみると、ローリスクである製品が好まれます。ですので、パートナー担当プリセールスは、販売ノウハウから技術ノウハウに至るまで、ありとあらゆる情報をできるだけ早く担当パートナーにインプットしなければなりません。
製品・ソリューション担当プリセールス
アカウント担当はエンドユーザーや、販売店やSIベンダーにフォーカスします。個々の製品やソリューションについては“浅く・広く”と言ったところです。一方で彼らに代わって、これらに“深く・狭く”フォーカスし、責任を持つのが製品担当のプリセールスになります。
製品担当のプリセールスは、エンドユーザーやパートナーに直接コンタクトするといったことはほとんどありません。前面にアカウント担当がいるためです。代わりに、市場(マーケット)に対してアプローチしていく重要な役割を担います。具体的には、イベントやメディアなど、不特定多数の前で自社製品を魅力やノウハウを伝えるといった仕事です。
ターゲット層だけでなく、普段一緒に仕事をする人も異なります。アカウント担当のプリセールスは、同じ“アカウント”を担当する営業と過ごす時間が多いです。対して製品担当のプリセールスは、マーケティングや製品開発部門など、同じ“製品”を担当する人たちと一緒に過ごす時間が長くなります。
プリセールスと言っても様々な役割があること、理解いただけましたでしょうか。実際にはもっと細分化できるのですが、大きく分けてみるとこんな感じになります。今度“レアキャラ”のプリセールスを見つけた際には、どのタイプのプリセールスか見極めてみてください(笑)。
次回は、このプリセールスに関する“ここ変”チックな話題を取り上げてみたいと思います。
小川大地(おがわ・だいち)
日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。
カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション。
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