欧州にみるスマートシティのサイバーセキュリティ:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/3 ページ)
ビッグデータとIoTがリアルタイムに連携するスマートシティではセキュリティの脅威にどう対応していくかが大きな焦点となる。今回は取り組みが進む欧州の動きを取り上げる。
前回は、欧州の個人データ保護政策と同時並行で進展するビッグデータのセキュリティ/プライバシー対策を取り上げた。ビッグデータ利活用の社会実装基盤として期待されるスマートシティの領域では、サイバーセキュリティまで踏み込んだ取り組みが始まっている。
ENISAが提唱するスマートシティICTの階層アーキテクチャモデル
2016年1月12日、欧州ネットワーク情報セキュリティ庁(ENISA)は、「スマートシティのサイバーセキュリティ:公共交通のアーキテクチャモデル」(関連情報)と、「インテリジェント公共交通のサイバーセキュリティとレジリエンス:優れた取り組みと提言」(関連情報)と題する研究報告書を公表した。
この研究は、公共交通事業者、地方自治体、政策立案者、サイバーセキュリティ業界を対象に、スマートシティにおける交通セクターのアーキテクチャをモデル化し、インテリジェント公共交通事業者の優れたサイバーセキュリティの取り組みを記述することを目的として実施されている。
図1は、スマートシティにおけるICTアーキテクチャの全体イメージを示している。階層別にみると、フィールドコンポーネント層(例、センサー/アクチュエータ)、データ転送ネットワーク層、データ処理層、データ集計/コネクティビティ層、スマート処理層から構成される。
図1.スマートシティにおけるICTアーキテクチャの全体イメージ(出典:ENISA「Cyber security for Smart Cities. An architecture model for public transport」、2015年12月)
図2は、インテリジェント公共交通事業者側から見たインタラクション階層モデルの全体イメージを示している。インタラクション階層は、ビジネス層(例:チケット決済、交通調整、通行客情報)、情報/データ層(例、旅行データ、決済データ、旅客情報)、アプリケーション層(例、SIRI:Service Interface for Real Time Information、GTFS:General Transit Feed Specification、CoAP:Constrained Application Protocol)、技術層(例、6LoWPAN、IEEE 802.15.4、HC-06 Bluetooth)、物理リンク層(例、ツイストペア、光ファイバ、無線)から構成される。
図2.インテリジェント公共交通事業者のインタラクション階層モデルの全体イメージ(出典:ENISA「Cyber security for Smart Cities. An architecture model for public transport」、2015年12月)
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