38年前の新人がいまに伝えたい、たった2つの必要なこと:ハギーのデジタル道しるべ(1/2 ページ)
今回は38年前に新人だった筆者の当時のエピソードから、新人に必要なものがたった2つしかないことをお伝えしたい。昔話の教訓として感じ取っていただければ幸いである。
自分の成果は喜んで広げよう
筆者はこのIT業界で38年間も疾走してきた。昔は新人だったわけだが、かつての経験から伝えたい事実がある。
昔、あるソフト会社での出来事だ。当時オンラインのプログラム仕様書上には画面設計図もあった。新人2年目の筆者は、自分で画面の絶対アドレスを指定し、表示項目Aにはデータベースで検索した結果のある部分を表示させ、しかも重要な顧客には「VIP」マークを高輝度表示するという感じでプログラミングをしていた。今からすると本当に大変な作業だ。様々な画面設計時における条件を考慮しながらプログラムを作成するため、デバッグにバッチプログラムの作業に比べて数倍の時間を費やした。
ある日一晩だけ徹夜した。ホストコンピュータの特性を調べて作業をすれば、相当のスピードアップが期待できると思ったのである。様々なテストデータを作成し、それを幾つかの画面表示用のパターンコーディングの中にあてはめていく。
そのプロジェクトの全員が、「この特性はランダムな感じだ。その都度、実際にテストを幾つも実施しないと適正なプログラミングができない」と思っていた。筆者はその解決策を見出すことができた。翌朝、全員にこの結果を公表して遅延気味だったプロジェクトはオンスケで終了した。ところが、10年以上も古株の一人が筆者にこう言ってきた。
「なんで公表するんだ! こういう技を自分で見出したなら、自分だけのモノにするのが当たり前だろう。君は徹夜までしたのに、大馬鹿だよ!」
難関な課題を解決する技を見出すことは、技術者にとって大きな挑戦であり、その成果によって大きな利益を得られる。その技を公表すればだれでも実践できてしまい、利益は得られない。だから、「損をしている」というのが彼の言い分だった。
でも筆者は、「技はまた見つければいい」と考えた。匠の技なら、教えてもらっても長年の経験を積まなければ体得できない。しかしコンピュータの技は、今日参画したばかりの新人でもマネできる。それなら先に教えてしまって、自分はもっと先を目指すしかない。だから頑張れるし、技を全員に公表してプロジェクトが成功すれば達成感も大きい。自分だけ技を独占するようなやり方は、好きにはなれなかったのである。
38年前は独自の技を持つ先輩技術者が何人もいた。だが、その中の2、3割の方々はそれではいけないと、進んで技術を披露されていた。技を教えない先輩たちは徐々に業界から去っていた。
当時の筆者の考えは、「面白いプログラミングをもっと極めたいから、自分のために他人に教える」という自分勝手なものだったが、いま振り返ればむしろ幸いだったと確信している。だから新人教育の講師となる後輩たちは、会社の機密事項でもない限りは自分が苦労した結果を公開してほしい。新人の成長につながるし、自分のためでもある。
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