IIJがクラウドで“反撃ののろし” 国内シェアトップの勝算は:Weekly Memo(2/2 ページ)
IIJが企業向けクラウド基盤サービス市場で5年後に国内シェアトップを目指すと宣言した。同市場は今後、ますます激戦区になると見られている。果たして勝算やいかに。
勝算は「ホステッドプライベートクラウドサービス」にあり
IIJのクラウド事業に関する実績を表すキーとなる数字については下図を参照していただきたい。ちなみに、図の左下には顧客数の推移や顧客の月額規模別の社数まで記されている。自社のクラウドサービスの内容についてここまで公開しているのは同社だけだ。これは情報開示の観点から大いに評価したい。
そして今回、IIJは5年後の2020年度(2021年3月期)を見据えた事業計画も明らかにした。それによると、2020年度の全売上高は2500億円、年率15.5%の伸長を目指す構えだ。このうち、クラウド事業は450億円、年率33%の伸長を見込んでいる。全売上高に占める割合は18%になる計算だ。その中核を担うのがIIJ GIO P2である。
さらに、2020年度のクラウド事業における一大目標として掲げたのが、勝氏の冒頭の発言にある「企業向けクラウド基盤サービス市場で国内シェアトップ」を獲得することだ。ただ、クラウドサービスの国内シェアについては明確な調査データを見たことがないので、会見の質疑応答で現状認識を聞いたところ、勝氏は次のように答えた。
「企業向けクラウド基盤サービスにおける現状のシェア競争では、パブリッククラウドをベースとしたAmazon Web Services(AWS)がトップだろうが、当社はAWSと競合するのではなく、IIJ GIO P2が提供するサービスの領域で国内トップを目指す。その領域こそが今後、企業向けクラウド基盤サービスとして最も求められていると確信している」
つまり、ホステッドプライベートクラウドサービスで国内シェアトップを目指すということだ。IIJの勝算は、この領域にフォーカスしているところにあると推察できる。ただ、この領域はパブリッククラウドサービスで先行するAWSやMicrosoft Azureも手掛けており、IIJと同じ国産勢であるNTTコミュニケーションズ(NTT Com)や富士通、NECなども注力している。まさしくクラウド市場の主戦場になる可能性が高い。果たしてIIJが思惑通り、国内トップを獲得できるか。注目しておきたい。
とはいえ、クラウド市場のさらなる活性化のためには、国産勢もIIJのような“宣言”をもっと積極的に行うべきではないか。なぜならば、「日本企業はようやくクラウドが使えそうだと認識し始めた段階。クラウドがもたらすイノベーションはこれからが本番」(IIJの鈴木幸一会長)といえるからだ。
NTT Comの庄司哲也社長も先頃、同社の事業戦略説明会で「“ITジャイアント”といわれるグローバルベンダーと、クラウド事業でしっかりと渡り合っていけるようにしたい」と、クラウド事業のグローバル展開に強い意欲を示した。(2016年4月18日掲載「NTT Comはクラウド市場で“ITジャイアント”に勝てるか」)
確かにグローバルベンダーは強力だが、国産勢もプレゼンスをもっと高めてほしいものである。IIJの鈴木氏が言う通り、勝負はこれからが本番だ。
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