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第7回 SDS導入のきっかけと効果、一斉導入した欧州通信事業者の場合:データで戦う企業のためのIT処方箋(2/2 ページ)
SDSの特徴やメリットを説明してきましたが、実際に利用している企業では何を期待して導入に至ったのか、またその効果はどれほどだったのかは気になるところです。今回は一斉導入に踏み切った欧州のユーザー企業事例を紹介します。
課題解決の方法
課題に対する検討の結果として、迅速なシステム展開を可能にしつつコストを抑制する方法として、SDS方式を採用することに決定しました。決定に至った経緯は、それぞれの課題について以下の対策が取れることからです。
- データのマイグレーション:既存投資環境を活用しつつ、汎用ハードウェアを利用した新しいプラットフォームや技術(例えばオールフラッシュストレージなど)を追加したり併用したりできる
- BCPとしての懸念:異なるストレージハードウェアを利用していても、単一のSDS製品、アーキテクチャで全データセンターの運用を統一できる。加えて、ストレッチクラスターによる広域クラスタ構成を組むことができ、アプリケーションレベルで複数データセンターにまたがった高可用性環境も提供できる
- ベンダーロックイン:ストレージ固有、個別のライセンスなどは不要になり、SDSの費用と汎用ストレージのコストだけを考慮することができる。結果として、各ハードウェアベンダーに対して価格交渉の主体性を維持できる
- 多岐にわたるサービスに対するSLAの達成:個別のストレージ単位ではなく、全ストレージ空間にわたる統合されたデータサービスとして、性能や機能などのSLAを汎用的に提示、提供できる
- 今後発生するさまざまな新事業に対応できる柔軟性を持つIT基盤:ストレージ管理基盤の統合による複雑さが低減できる。まだ、APIも含めて自動化、継続的な最適化が可能な構成を提供できる
獲得した効果
それでは、実際の効果はどうだったのか見てみましょう。
- 異機種混在環境での既存設備投資の有効活用:追加ストレージハードウェア投資の延期を実現
- 初回投資の抑制:サブスクリプションライセンスによるOPEX化、追加ストレージハードウェア投資の最小化
- サービス提供範囲の拡大とリリース迅速化の両立:既存担当者でのシステム提供までの時間短縮
- 管理能力の強化と自動化の実現:統合基盤確立は達成。APIを活用した運用基盤は別のSDC(Software Defined Compute)基盤などと連携して準備中
以上がSunrise Communicationsの事例です。さすがに具体的なROIまでは開示されていませんが、IT部門のインフラとして専任10人だけでの運用となれば、国内企業なら準大手や中堅企業でもあてはまる規模の人数です。通信事業者という大企業の事例ではありますが、課題と目的は規模の違いこそあれ、参考になるかと思います。
次回は、“あえて”SDSを一気に導入「しない」ことを選択した国内企業の事例を紹介します。
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