この記事は成迫剛志氏のブログ「成迫剛志の『ICT幸福論』」より転載、編集しています。
あるイベントの講演で、日本の消費者のプライバシーとセキュリティ感覚に関する興味深い調査結果があり、出典元の“EMC Privacy Index 2014”を見てみました。
“EMC Privacy Index”は、世界15の国と地域、1万5000人の消費者を対象に、オンラインプライバシーに対する消費者の意識と動向を調査したものです。
さまざまな調査項目(質問項目)があるのですが、日本人の意識に焦点を当ててピックアップしてみると、その極端さが浮き彫りとなりました。
“自分のプライバシー”は誰が守るのか?
日本人は調査対象の15カ国中、最もプライバシーに関して保守的であり、情報漏えいを恐れ、また政府の対応を最も不満足に思っているのです。しかしながら、個人個人のプライバシー対策に関しては、15カ国中最も対策を行っていないという調査結果となっています。
「プライバシーを一番気にしているが、プライバシーを自分で守ることはせず、国や誰かが守ってくれると思っている」という国民性とも思えてしまう結果なのです。
個人情報保護法の過剰反応ともいえる結果です。質問の中の「代償」という単語がよくないのかもしれませんが、利便性向上のためにプライバシーが使われることに関して、15カ国中最もネガティブな反応です。
今後のプライバシー保護に関しても、15カ国中最も悲観的な国となっています。
世界で一番、プライバシーについて心配していることからか、政府のプライバシー保護の施策に最も不満を抱いている人が多いのも日本です。
それでは、個人としてのプライバシー保護・セキュリティ対策の意識はどうでしょうか?
定期的にパスワードを変更している人は、わずか22%です。
また、最も基本動作ともいえる「個人情報が含まれる文書を廃棄する際にシュレッダーにかけている」割合は55%以下という結果です。これも残念ながら15カ国中、中国やインドよりも低いワースト1です。
プライベートなことを書き込みことの多いSNSなどのプライバシー設定をカスタマイズしている割合も50%で最下位です。
いつも持ち歩くからこそ気を付けておきたい「携帯電話やタブレットなどのパスワード保護を行っている」割合も36%と最下位。ブービーのロシアは50%超えですから、ダントツの最下位といえます。
現代はデジタルビジネス化の時代です。デジタル世界、サイバーワールドの安心・安全について、国や事業者ができることには限界があります。日本の消費者も個人個人が自己責任で対策を行うように、啓発活動を行っていく必要がありそうです。
「自分のプライバシーは自分で守る」ことができるようになるために。
著者プロフィル:成迫剛志
SE、商社マン、香港IT会社社長、外資系ERPベンダーにてプリンシパルと多彩な経験をベースに“情報通信技術とデザイン思考で人々に幸せを!”と公私/昼夜を問わず活動中。詳しいプロフィルはこちら。
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