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元セキュリティ技術者の弁護士がチャットに求めた厳しい条件とカッコイイ使い方(2/2 ページ)

機密情報を扱う法律事務所では堅牢なセキュリティ対策が必須だけど、ガチガチでは仕事がはかどらない――コスモポリタン法律事務所ではそんなジレンマの解決に取り組んだ。

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元技術者がこだわるセキュリティの姿


チャットツールでのやり取りのイメージ(画像提供:AOSモバイル)

 セキュリティエンジニア時代の高橋氏は、金融などセキュリティ要件の厳しい業界を主に担当していたという。「機密性の高い情報の管理やセキュリティ対策はなるべく手元で……」と考える企業は多いが、高橋氏は法律事務所でのチャットツールの運用環境にクラウドを選択した(InCircleはオンプレミスでも運用可能)。

 「クラウドを不安視する声はありますが、以前の経験からセキュリティリスクが最も高いのは自社サーバの脆弱性だと考えています。法律事務所のような規模の小さい企業の経営者やIT担当者が自分の手で常に最新パッチをあて続け、ファイアウォールや暗号化などの対策を幾重にも講じて運用することは非常に難しいだけに、現実的ではありません。セキュリティ動向も常に勉強しなければなりませんし、相当に努力していても、セキュリティホールを完全に無くすことはできません」

 高橋氏によれば、基本的にセキュリティレベルは高いことが理想的であるものの、100%の安全性は存在しないため、製品の検討ではセキュリティリスクが最も低く、現実的に導入できるものを選ぶべきだと話す。

 チャットツールについては、ベンダーから詳しい情報提供があり、大企業での導入実績があったことも考慮して、同事務所で現実的に運用可能な方法としてクラウドを選択したとのことだ。

 チャットツールでのコミュニケーションは、基本的に案件ごとにチャットルームを用意して行い、関係者の間で必要な情報を共有するようにしている。勤怠などの連絡もチャットで行っており、例えば、病気で欠勤せざるを得ない場合でもPCを開くことなくスマートフォンなどで職場の状況が分かるため、仕事への影響を少なくできるメリットもあるようだ。

 高橋氏によれば、投稿するメッセージについては特に禁止事項などを設けていない。「ルールで使い方を制限すれば、かえって委縮してしまい、使わなくなってしまいますので、ちょっと恥ずかしいようなことでも積極的に投稿してもらう方がよいと考えています」

 ちなみに、高橋氏はチャットのメッセージをスマートフォン経由でスマートウォッチに表示させている。混雑した電車内などの場でもスマートフォンの画面をわざわざ見ることなく、手元で必要な情報を瞬時に確認できるメリットを享受しているとのことだ。


メッセージを手元のスマートウォッチでも確認できるようにしている

 チャットツールの導入から2年ほどが経ち、現在はInCircleがコスモポリタン法律事務所のコミュニケーション基盤として日常的に使われている。今後は、投稿された過去のメッセージのアーカイブ機能やほかの情報共有ツールとの連携の拡大などをメーカーに期待しているという。

 高橋氏は、「セキュリティと利便性は必ずしもトレードオフの関係にあるとはいえません。むしろ、セキュリティレベルの高い製品の方が使い勝手もよい場合があります。当社の場合ではメールのやり取りが減少したことで情報漏えいのリスクを低減でき、コミュニケーションを活性化することができました。セキュリティが弱いツールでは後から対応に苦労してしまうことがあるでしょう」とアドバイスする。

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