コレ1枚で分かる「空間をデータ化するIoTデバイス“ドローン”」:即席!3分で分かるITトレンド(2/2 ページ)
ビジネス利用の機運が高まっているドローン。空飛ぶIoTデバイスとしての可能性を踏まえつつ、活躍の場面を整理します。
土木工事現場での測量や記録
土木工事の現場で、土地の形状や掘り出す土量を計測し、工事の経過を画像で残すことに使われています。
工事現場を複数の角度から撮影して3次元画像を作成、それを工事図面と重ね合わせることで工事箇所や掘り出す土量を計測できます。人間が行うことに比べ、短時間で高精度に計測できるようになりました。また、広い工事現場での作業状況を上空から撮影し、工事の進め方や進捗を記録し、安全管理や進捗管理に役立てようという取り組みも始まっています。
耕作地のデータ収集や農薬散布
これまで勘や経験、人手に頼りがちだった耕作地の様子をデータとして捉えるためにも使われています。
例えば、ドローンに搭載した複数の異なる波長の光で撮影する「マルチスペクトルカメラ」を使い、
- 水分の不足しているところを見つける。
- 肥料の足りないところを見つける。
- 生育具合を確認する。
といったことが行われています。
これまで、広い耕作地でこのようなデータを集める手段はありませんでした。もちろん航空機やヘリコプターを使えばそれも可能ですが、膨大なコストが掛かり、現実的ではありません。ドローンならあまりコストを掛けず、1日に何度でも耕作地の上空を飛び回り、撮影することができます。そして、そのデータを生かして効率の良い耕作地の管理や作業が可能になるのです。
また、田畑への農薬散布にも使われています。人力でまくには、背中に農薬を背負って歩きながら行わなければなりません。広い田畑なら何日も何週間もかかってしまいます。かといって、車両では田畑の内部までは入り込めませんから、散布は困難でした。
そのため、以前は有人ヘリコプターによる上空からの農薬散布も行われていたのですが、高高度からの散布は農薬が広範囲に飛散することから人体への影響が心配され、次第に行われなくなっています。そこでドローンが使われるようになりました。有人ヘリコプターに比べて低高度で散布ができるので、周囲への飛散量が抑えられるからです。
荷物の配送
宅配便や郵便などの荷物をドローンで届けようという取り組みが始まっています。
ドローンであれば、道路の渋滞を気にする必要がなく、地上で配送するよりも短い時間、低コストで届けられると期待されています。
また、住宅や集落が広い地域にまばらに点在している地域は世界を見渡せば少なくありません。そういうところで荷物一つのためにトラックや配送員を使うのではコストが掛かりすぎます。その課題を解決しようと、ドローンによる配送が試みられています。
災害現場の調査や緊急物資の輸送
災害現場の調査にも活躍しています。
例えば、河川の決壊や土砂崩れなどを伴う災害では被災現場へ入れないことも多く、空からの調査は有効な手段です。しかも、低空でカメラからの画像を見ながら移動し、高画質の動画撮影できるので被害状況を詳細に把握できます。
また、道路が寸断され孤立した集落に物資を届けるようなときにも役に立つと期待されています。
防犯や犯罪捜査
警察でもドローンが使われています。
例えば、米国では危険な犯罪現場の偵察、メキシコ国境の密入国者の監視に使われています。また日本でも交通事故や犯罪現場の捜査にドローンの導入が進められています。
我が国では、2015年12月の航空法改正により、ドローンの飛行ルールが明確になりました。これをきっかけとして、ドローンの活用が一層広がるものと期待されています。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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