第12回 システムやデータの運用管理を自前でするためにIT部門がすべきこと:データで戦う企業のためのIT処方箋(3/3 ページ)
ユーザー企業にとってITシステムの管理は、本業とは異なる単純な負担と考えられてきました。しかし、クラウド活用の広がりから業務部門も巻き込む新たな役割が期待されています。今回は増大していくITインフラを自社で管理をする際に必要な対策を紹介します。
IT部門だけでも取り組める「データ管理」の標準化ステップ
「データ」の管理では、大まかに次の3つの観点がポイントです。
(1)適切な場所への統合・分散
自社サイト/データセンター(ハウジング)、データセンター(ホスティング)/クラウドなど、業務運用や既存資産(拠点)に応じて検討します。
(2)適切なシステムやストレージの選定
性能(オールフラッシュアレイ、ソリッドステートディスク)や効率化(圧縮や重複排除)など、用途やコストに応じて検討します。
(3)データの活用性の維持
データの可用性の担保(バックアップ、事業継続計画、災害対策、外部テープ保管・アーカイブ)や流動性の担保(場所・モノでのデータ移行)など、必要となる活用性に応じて検討します。
これらの観点で挙げたポイントは、連載の第2回で紹介したSLAをもとに、第3回で紹介したシステム構成を選定して行います。データ管理に直結するSDS(ソフトウェア定義のストレージ)なら、第6回で紹介したステップで進めます。その際には、特に以下の点の解決を大きな目標として方針を決めていきます。
- 人的負荷の低減(より汎用的に、簡単に)
- 選択肢の拡大(新しい技術を無理なく簡単に採用することで効率化を図る)
- 設置場所の変化への対応(経営方針や運用に合わせた将来の変更に備える)
- 既存資産の有効活用(今あるモノやデータを入れ替えるのではなく拡張する。主にIT部門として追加投資の抑制が目的)
- 導入および運用コスト低減(外部へのモノや運用の発注を抑制)
これらの目的は、従来のITシステム導入や更改時の検討事項とほぼ同じです。異なるのは、通常では導入するシステムに関連する業務だけに集中しますが、一度ITシステム全体を見渡して検討する点です。
例えば、選択肢の拡大や設置場所の変化については、今回の導入・更改ポイントだけでなく、新しい技術の採用(インメモリDBやフラッシュストレージなど黎明期から拡大期に移りつつある技術)や、クラウドサービスの利用(オンプレミスとクラウド間やクラウドと別のクラウド間でのシステムやデータの移行が必要です)といった、次の更改時に何が必要になるかの想定まで含むという具合です。
自社だけで検討するのが難しければ、より豊富な情報を持つSIerやベンダーに、そこまでを想定した提案を要請してもよいでしょう。また、ユーザー企業が積極的に情報収集を行うことが重要です。
日本企業のIT管理者は、日々の運用の制約から現場を離れられないことが多く、また、外出自体もなかなか認められないという文化の企業もあります。海外の手法が常に正しいわけではありませんが、海外のように実際にシステムを持つ・使う主体であるユーザー企業のIT担当者自身が情報を積極的に集められれば、もっとよいシステムを作り上げ、運用できるようになるのは間違いありません。
いま抱えている課題に関した情報をセミナーや勉強会に出かけて集める以外にも、最近はWebブラウザで閲覧するインターネット上でのセミナー(ウェビナーといいます)を開催する企業も少しずつ増えてきましたので、これも活用したいところです。また、自分から出かけなくても、ベンダーやSIerに説明の機会を持ってもらうことで新しい情報を入手できます。ITベンダー自体が「協創」といったコンセプトで、ユーザー企業と共同プロジェクトを進める場を用意してきていますし、大手のIT系メディアではIT担当者同士の情報交流の場を提供するところもあります(※一例として、ITmedia エンタープライズでは「俺たちの情シス」という交流会を定期的に開催しています)。
こういった場へ積極的に参加したり、せめて、容認される企業文化を作っていったりすることで、IT部門としてはシステムだけでなく業務面でもより広い視野を持つことができるでしょう。場合によっては、そのまま自社にも適用できる事例などの参考情報も手に入るでしょう。日々の運用で多忙だったとしても1カ月に一度、せめて四半期に1回でも半日から1日程度の時間を確保するだけで良いので、IT部門の役割としてこうした場への参加を検討してみてください。
次回は「社外を生かす」アウトソーシングを活用する際のポイントを紹介したいと思います。
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