コレ1枚で分かる「デジタルトランスフォーメーション」:即席!3分で分かるITトレンド(2/2 ページ)
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」による社会の変化を「サービス化」「オープン化」「ソーシャル化」「スマート化」の4つの側面から分析し、新たなビジネスの可能性を探ります。
ソーシャル化
インターネットの普及とともに、コミュニケーションコストが劇的に下がりました。その結果、誰もが仲介者を介することなくフラットにつながることができるようになりました。そのため、仲介者となって権力や富を集中させることが難しくなりつつあります。
ソーシャルメディアをささえるテクノロジーは、この流れをさらに加速させています。UberやAirbnbなど、これまでの常識を破壊しようとするビジネスは、こんな仕組みに支えられています。これまでの常識を破壊する新たなビジネスを登場させる基盤としても大きな役割を果たすことになるのです。
スマート化
人それぞれの趣味嗜好に合わせ、個別に対応していたら手間も掛かり、コストも掛かります。そのため大量生産や標準化、全体最適化こそがあるべき姿だといわれ続けてきました。しかし、IoTの普及により、「個別の事実」をきめ細かくリアルタイムに捉えることができるようになり、この常識も変わろうとしています。
IoTによって収集された「個別の事実」は、人工知能によって分析され、それぞれの事実や意向をくみ取ります。そして、全体を考慮しつつも可能な限り個別のニーズに対応しようとするでしょう。さらに人工知能は大量の「個別の事実」を分析し、新たな知見、未来予測、最適な判断を促し、私たちの住む現実社会をより快適にしてくれます。
また、機械が人間の代わりを果たしてくれる範囲は、ますます広がっていくでしょう。肉体的にも知的にも、時間と労力をかけることで生み出してきた価値は機械に置き換えられていきます。その方が、はるかに効率的で、正確で、安全だからです。一方で、人間の役割は大きく変わってくるでしょう。感性、協調性、創造性がこれまでにも増して重視されるようになり、人間は新たな進化のステージに立たされることになるのです。
かつてITは、コストの削減や時間短縮、生産性の向上とといった「効率化」という価値を提供してきました。しかし、デジタルトランスフォーメーションは、新しい常識を生み出し、ビジネスをこれまでの常識とは異なるカタチへと向かわせようとしています。見方を変えれば、既存のビジネス常識の破壊であり、ITの活用は、今やそういう次元へと移りつつあるのです。
かつての競合は、機能・性能、品質、価格でした。従って、機能・性能の向上、品質の向上、製品ラインアップの拡大、業務プロセスの効率化、印象的なマーケティングの実践により、競合に打ち負かすことができました。しかし、今、業界を隔てる境界線が消滅し始め、他業界の企業が、そこで培った能力を生かして新たな競合を仕掛けています。例えば……
- Uberとタクシー業界
- FinTech企業と金融業界
- Airbnbと旅行・ホテル業界
- Googleの自動運転車と自動車業界
- スマートフォンとデジタルカメラ
- 人工知能による機械翻訳と人手による翻訳 など
また、これまでの業界の壁を乗り越えた新たな融合も生まれています。例えば……
- 富士通は、自社の施設内に「植物工場」を作り、農産物の生産・販売を行い、そのノウハウを使った「データに基づく農業」を推進
- Appleは、身体に装着するウェアラブルデバイス「Apple Watch」で人の運動量や身体の状態をデータとして記録、それらを生かしたヘルスケアや医療サービスを提供。
- 大手コンピュータメーカーのIBMは、自社のコグニティブ製品を使った気象情報サービスを提供
こうした競争環境の変化の背後にあるのは、テクノロジーの進化に支えられた「デジタルトランスフォーメーション」とそれに伴う市場の変化です。これまでの「業界の常識」にとらわれず、ITを味方に付けた新たなビジネスへの取り組が求められています。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
関連記事
- 連載「即席!3分で分かるITトレンド」記事一覧
- 日本企業はなぜ、“攻めのIT”に及び腰なのか
企業におけるデジタルトランスフォーメーションの推進には、最高経営責任者(CEO)のリーダーシップが不可欠だ。果たして日本のCEOはその心構えと覚悟ができているか。世界のCEOを対象に行われた最新の民間調査結果をもとに考察したい。 - コレ1枚で分かる「人工知能との付き合い方」
人工知能が著しい変化を遂げる中、私たち人間は人工知能とどうつきあっていけばいいのでしょうか。 - “攻めのIT”ができる情シスになるために(1)
「うちの情シス、ダメで……」という経営層の嘆きを耳にした著者が、その処方箋として「“攻めのIT”ができる情報システム部門への改革」を考察。数回に分けて紹介していく。第1回は“攻めのIT”の概要と、改革のための検討要素として「情報システム部門の位置付け」を紹介する。 - コレ1枚で分かる「空間をデータ化するIoTデバイス“ドローン”」
ビジネス利用の機運が高まっているドローン。空飛ぶIoTデバイスとしての可能性を踏まえつつ、活躍の場面を整理します。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.