“攻めのIT”ができる情シスになるために(1):成迫剛志の『ICT幸福論』
「うちの情シス、ダメで……」という経営層の嘆きを耳にした著者が、その処方箋として「“攻めのIT”ができる情報システム部門への改革」を考察。数回に分けて紹介していく。第1回は“攻めのIT”の概要と、改革のための検討要素として「情報システム部門の位置付け」を紹介する。
この記事は成迫剛志氏のブログ「成迫剛志の『ICT幸福論』」より転載、編集しています。
“攻めのIT”の利活用が企業存続の要
「ITを戦略的に活用できない企業は“消えていく4割”にまわってしまう」(経済産業省 商務情報政策局 石川正樹審議官)――。2015年6月に経産省がそう公表したように、世界は本格的なデジタルビジネス時代を迎えている。
モバイル、ビッグデータ、IoT、人工知能、ロボットなどの急速な発展に伴って、これらのITをどう事業に利活用できるかが企業の将来にとっての重要な要素となっている。身近な例でいえば、流通小売業におけるAmazonの台頭、運輸業におけるUberの台頭など、これまで競合でなかった企業がITの利活用によって圧倒的な競争力を持ち、従来の業界勢力図を脅かす存在となり得るのである。
このような環境を受け、“攻めのIT”という言葉をあちらこちらで聞くようになった。“攻めのIT”とは、ITの活用による製品・サービス開発の強化やビジネスモデルの変革を通じて新たな価値の創出、競争力の強化を目指すことを指す。
これまでのIT利活用は、業務の効率化、コスト削減を目指す、いわゆる“守りのIT”であった。これまでも、戦略情報システム(SIS:Strategic uses of Information Systems)、ERP/CRMの導入、データウェアハウス(DWH)/ビジネスインテリジェンス(BI)、コンピュータテレフォニーなど、“攻め”ともいえるような“最新ITの利活用”が進展してきたが、これらのほとんどは“社内の業務”を対象としたIT利活用で、今、語られている“攻めのIT”によるビジネスモデルの変革とは、全く異なるものだと考えられる。
最近では、経産省による“攻めのIT活用指針”の策定や“攻めのIT経営銘柄”の発表などもあり、従来ITに関心のなかった企業の経営者でも“攻めのIT”という言葉を耳にすることが増え、そのため自社の“攻めのIT”戦略が気になり始めている経営者も少なくないのではないだろうか?
私はこれまで情報システム部門とIT企業の両方を交互に経験し、2014年末から各種のCIOレベルの会合への出席やビットアイル主催の「CIOラウンドテーブル」などでさまざまな話を聞く機会があった。それらをもとに「“攻めのIT”のための情報システム部門の改革」について考えてみたい。
その検討に当たって、考えるべき要素を幾つか挙げていきたい。今回は、企業における情報システム部門の位置付けについて整理する。
1. 情報システム部門の位置付け
多くのCIOレベルの方々の話を聞いて分かったのは、情報システム部門の位置付けが企業によって異なることだ。大きく以下の2つに分類できそうである。
a)間接部門としての情報システム部門
- 総務部電算室の流れをそのまま踏襲した位置付け。
- 一括採用した新入社員の一部が、本人にとっては不本意な状態で情シスに配属。
- 何らかの事情で事業部門(開発、製造、営業など)から情シスに職種転換した中堅社員。
- 「私はITのことは全く分かりません」と着任あいさつをするCIOや情報システム部門責任者。
- コスト削減が情報システム部門のKPIであり、それが全てである。
b)戦略部門としての情報システム部門
- 各事業部門、間接部門をリードする位置付け。守りのIT領域においてもBPRを主導してきたなど。
- 新卒採用時に、情報システム部門の候補者として選考し、配属。
- 事業部門のエース級の人材を情報システム部門に一時的に/一定期間配属し、事業部門の状況を情報システム部門に浸透させる。
- CIOや情報システム部門責任者は、経営視点で物事を考え、また自社のITと競合他社のITの利活用状況や世の中のトレンドを理解している。
- 情報システム部門のKPIは、コスト削減だけではない。
著者プロフィル:成迫剛志
SE、商社マン、香港IT会社社長、外資系ERPベンダーにてプリンシパルと多彩な経験をベースに“情報通信技術とデザイン思考で人々に幸せを!”と公私/昼夜を問わず活動中。詳しいプロフィルはこちら。
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